コロナ禍で家事環境も激変。ワンオペの達人が伝授する「家事のリノベーション術」とは?

コロナ禍で家事環境も激変。ワンオペの達人が伝授する「家事のリノベーション術」とは?

リノベーション──一般的には「住まいの改修・改善」のことをこう呼びますが、空間環境だけではなく日常生活全般をもリノベーション(改革・刷新)すると、QOLはよりいっそう向上していくはず。LogRenoveは、日々の何気ない暮らしのなかで、我々が直面するさまざまな悩みの解決策を、斯界の識者とともに探っていきます。さあ、私たちと一緒に「ライフスタイルのリノベ術」を追究していきましょう。

洗濯に掃除…煩雑な家事も遊び心を加えて楽しくこなす

新型コロナショックの影響で、企業の業務形態は激変──リモートワークが中心となり在宅時間が増え、パートナーと「家事分担をどうするか」で、つい揉めてしまうケースも、ままあるのでは……? でも、ちょっと待ってください! そんな些細ないざこざで無駄なエネルギーを費やすよりは、積極的に家事を引き受け、それをストレスレスでこなせるよう工夫をしたほうが、家庭も円満となり、おたがい健全なメンタルを保てるのではないでしょうか。今回は、結婚して14年間、ほぼすべての家事と育児を担当してきた“ワンオペの達人”である、フリーライター兼コラムニストの村橋ゴローさんに「10倍楽しくなる家事のリノベーション術」を伝授してもらいました。

「僕は結婚以来、掃除・洗濯・炊事・家の備品や食料の買い出し、それに育児…と、これらのほとんどをひとりでやっている兼業主夫です。しかし、妻から『洗濯やってよ』『ご飯つくってよ』と、言われた記憶は全然ありません。どれも自主的にやっているのです。ではなぜ、あらゆる家事を一手に引き受けているのか? それは『楽しいから』! この一語に尽きます」(村橋さん)

「煩雑と思われる家事も、やり方次第ではエンターテインメントにリノベーションすることができる」と村橋さん。それは一体、どういうことなのか? まずは、家事のなかでも一番好きという「洗濯」について、二枚の写真を見せていただきました。

「一枚目は、巨人の原監督のグータッチを模した〝グータッチ干し〟です」(村橋さん)

たしかに、読売ジャイアンツの原辰徳監督が、得点した自軍選手を迎え入れるときにやるグータッチに見えるじゃないですか! 村橋さんは生粋の日ハムファンらしいのでアレですが(笑)、ジャイアンツファンのアナタなら(ジャイアンツファンじゃないアナタだって)、ぜひチャレンジしてみるのも一興ですね。

「二枚目は格闘技ネタになりますが、グレイシー柔術のグレイシートレインを模した〝トレイン干し〟です」(村橋さん)

格闘技に明るくない人でも、その名くらいは知っているに違いない「グレイシー柔術」。グレイシー一族が電車のように隊列を組み花道を入場してくるシーンが、今にも目に浮かんできそうです。

「こうして自分の趣味である野球や格闘技をエッセンスにした、いろいろな干し方を試して遊べば、洗濯も一気にエンターテインメントへと昇華できます。さらに、じつはこれ、けっこう理にかなった干し方でもあるんですよ」(村橋さん)

これからは冬に差し掛かり、洗濯物が乾きにくくなります。とくに厚手のパーカーやトレーナーだと、脇の部分が一日干しても乾かないことも……。でも、グータッチ干しやトレイン干しなら、脇の部分もパーカーのフード部分もすぐ乾く! なるほど、ちょっとした工夫で家事が楽しくなる、ライフハック的な「技アリ家事術」といったところでしょうか。

「僕は、ちょっと面白くて、それでいて実践的な家事をオモシロ家事、略して『オモカジ』と呼んでいます」(村橋さん)

おやおや、こちらの写真を見てみると……椅子の上に高く積み上げられた洗濯物の山が!?  洗濯って、干すまではいいものの、畳むのが面倒だったりしますよね? ましてや数日間サボってしまえば、とんでもないことに!

「ウチは子どももいるので、二日サボっただけでもこんな状態になってしまいがち…。けれど、僕ら夫婦はこれを『現代アート』と呼んで、笑い合っています」(村橋さん)

たとえば、自分がサボってこのような状態になっても「現代アートだから」と言えば、笑ってもらえる。もしくはパートナーが何日かサボってこの状態をつくり上げたとしても、「現代アートかぁ」と思えば、相手にイラつくこともない。つまり、人間だから家事をサボることだってある。だったら、それをポジティブに解釈してしまえば、おおらかな気持ちで許し合える──これも立派な家事術の一つ。マインドのリノベーションなのです。

あと、「○○干し」「オモカジ」「現代アート」……と、村橋さんみたいにスキあらば洒落たネーミングを考えてみるのも、より楽しさを倍増させる秘訣なのかもしれません。続けて、村橋さんが推奨する「オモカジ」は「掃除」編に。さあ、どんな奇天烈な工夫をなされているのやら? 

「朝、気持ちよく顔を洗っているだけなのに、洗面台や鏡がビショビショになってしまうことってありません? それでいちいち洗面台を拭くのですが、これが毎日となると面倒くさい。そんなときに使えるのが、映画『ベスト・キッド』です」(村橋さん)

『ベスト・キッド』といえば、80年代半ばに大ヒットしたアメリカ映画。気弱な主人公・ダニエルが老カラテマスター・ミヤギと出会い、成長していくという青春ストーリーです。なかでもミヤギさんがダニエルに、車のワックスがけを教えるシーンは有名。この何でもないワックスがけにこそ空手の真髄が隠されているのだとか……?

「そうなんです! しかも、それを窓拭きに引用するのです。映画では『右手でワックスをかけ、左手で拭き取る……』とミヤギさんは教えこみますが、このセリフを念仏のように唱えながら洗面台を拭けば、あら不思議。『俺はベスト・キッドだ!』と思えるようになり、楽しくて気分もハイになっちゃうんです(笑)」(村橋さん)

億劫な作業でも「自分ならではの遊び」に変えれば、その時間は苦痛にならずに済む──すべては気持ちの持ちよう! もし、アナタがパートナーと同居しているならば、自分で洗面台を汚してしまうと、「きれいに拭いてよ!」と叱責されるでしょう。すると「やらされ感」が増幅し、単なる洗面台拭きも苦痛な行為になってしまいます。そんなとき、村橋さんよろしくの『ベスト・キッド』のような“遊び心”さえあれば、ストレスを溜めこむこともないのです。

奥様のお弁当を作り続けて14年! そのモチベーションとは?

前出のコメントにもあったとおり、村橋さんは朝・夕の炊事にくわえ、会社員であった奥様のお弁当づくりも結婚以来14年間欠かしたことがないと言います。はたして、そのモチベーションはどこから来るのでしょう?

「つい最近、妻はフリーランスになったのですが、彼女が会社員時代は僕が毎日つくっていましたね。もちろん、妻から『つくってよ』と強制されたことは一度もありません。モチベーション…何でしょうね(笑)? 僕はラジオを聴くのが趣味で、炊事や弁当もラジオを聴き〝ながら〟でやっている。先ほどお話しした洗濯や掃除も遊びながらやっているので、『オレは家事をやっている!』という感覚は、まったくないんです」(村橋さん)

すべては自主的に、そしてすべてが遊び──この感覚こそが家事を苦にせず続けるポイントだと飄々と語る村橋さんは、悟りを開いた修行僧のよう。とは言え「男の料理」というのは、得てして彩りもなく、ついつい茶色い系になってしまいがち……。お弁当だって前の晩の残り物を詰め込むことも。そんなとき、奥様のリアクションはどうなの? 文句の一つでも言われたら改善していく、そういったスタイルなのでしょうか?

「お弁当は茶色い系がデフォだし、大量につくりすぎたおでん、スーパーで衝動買いしたものの早々に僕が飽きてしまった黒ニンニクを10粒、これらを弁当箱に投入する日もあります。そうすると、彼女からすれば『対ねりもの』『対黒ニンニク』なわけですよ。それでも彼女は帰宅すると『食べきったー! 勝ったー!』と笑ってくれる。僕の家事仕事に文句を言われたことはないですし、いつも『ありがとう』と感謝してくれる。そんな彼女の愛があるからこそ、僕はのびのびと家事をやれるのだと思います」(村橋さん)

家事全般をやってもらったとしても、それに対して一切の不満を抱かない人間はいないでしょう。「洗濯物の畳み方が雑!」「料理がしょっぱい!」……ほか諸々、本音を漏らせば文句のひとつもあるはず……。だけど、「ありがとう」と感謝してくれるから、また次の日も頑張ることができる──あえて例えるなら「母親と小学生の子ども」のような関係? 「ママのためにセミの抜け殻を50個取ってきたよ!」と子どもが差し出だすと、卒倒しながらも母親は「すごいわねえ、ありがとう」と返す……みたいな。

とくに「女性からの賛辞と感謝の言葉」ほど、男性のガソリンになるものはありません。そう。「男のワンオペ」とは、パートナーによる究極の手のひら転がしなのです。

究極の家事を生み出す「心のリノベーション」

ただ、ワンオペの達人である村橋さんは「究極の家事」について、こうも付け加えます。

「究極の家事とは…もしかしたら、それは『評価されないこと』にあるのかな、とも思うんです」(村橋さん)

家人が知らないうちにトイレットペ-パーを収納する、昨日洗濯機に突っ込んだ洗濯物がクローゼットに折り畳まれ収納されている……。このように家人が気づかぬままに家がまわっている、すなわち「評価されないということが究極の家事である」という理屈です。「醤油が切れて困っていたの。買ってきてくれてありがとう!」と感謝されているようじゃあ、まだまだ100点満点には程遠いのかもしれません。

「『誰も評価してくれないなんて、最高の仕事をしてるじゃないか!』と考えるようにしています。僕は、ただ自分のなかのシュフ業をまっとうしていくだけです」(村橋さん)

また、村橋さんには6歳になる息子さんがいるらしく、育児も彼の担当。そこで、ある育児方法を家族全員が笑顔になれるものにリノベーションしたのだそう。

「僕は週7回のペースで子どもを銭湯に連れて行っているのですが、これが子どもの教育にすこぶる良く『湯育(とういく)』と僕は呼んでいます。銭湯は、さまざまなルールを学びながら、コミュニケーションを育む場でもあるのです」(村橋さん)

銭湯には「走らない」「騒がない」「かけ湯をしてから入る」……ほか、多くのルールが存在します。「家を一歩出れば、いろんなルールがあるということを子どもに学ばせるのに銭湯は最適」だと、村橋さんは断言します。

また、幼い子なら、服の脱ぎ着を自分でやるのもれっきとしたトレーニング。しかも、銭湯といえばご老人のサロン。小さな子どもがそこにいれば、『どうした、ボク? お風呂、好きか?』などと声をかけてくれて……。現代において失われがちとなっている、身近な大人とのコミュニケーションを図るにも最適なのです。

「あと、風呂上がりに子どもをラーメン屋にでも連れていけば、合計で2時間がママの自由時間に充てられる。すると家族全員が笑顔になれるのです」(村橋さん)

子育てしながら働くママは、スマホを10分眺めるのも許されないのが現実であることを、男性は絶対に忘れてはなりません。だから、せめて週末だけでも子どもを銭湯に連れて行けば、それだけで奥様から感謝されることは間違いなし。風呂上がりに子どもと一緒に町中華で一杯……なんて、パパにとっても最高で、まさに一石二鳥! 最後に、かの高杉晋作さんが詠んだ、ある素晴らしい歌を紹介しておきましょう。

「おもしろき こともなき世を おもしろく すみなしものは 心なりけり」

「つまらない」「面倒だ」……と嘆いたところで、家事や仕事は待ってくれません。ならば、遊び心をひとつ足して、自分の充実とする──そんな「心のリノベーション」ができれば、家事だけではなく人生すべても楽しみに満ちてくるのではないでしょうか。

 

村橋 ゴロー(むらはし・ごろー)

1972年生まれ。東京都出身。ライター・コラムニスト&主夫。大学生でライターデビューし、男性誌・女性誌・漫画誌・学年誌など幅広い分野で活躍。現在は千原ジュニア・田村淳・高橋克典など、多くの芸人・タレントの連載や書籍の構成を務めている。また、自身のワンオペ家事や育児の奮闘を綴ったコラム『ワンオペパパの大冒険』をハフポスト・ジャパンで連載中。自身の3年にも及ぶ不妊治療体験を綴った、近著『俺たち妊活部』(主婦の友社刊)が好評を博す。

公開日 2020年10月20日
更新日 2023年2月14日

LogRenoveをフォローする

販売中のおすすめリノベ物件