2020年のマンション市場をもっとも賑わせた意外なエリア。そして、2021年注目の郊外エリアとは?

2020年のマンション市場をもっとも賑わせた意外なエリア。そして、2021年注目の郊外エリアとは?

人々の生活スタイルが大きく変わった2020年。「住まい」に対する考え方も大きく変わりました。ここ数年の都心人気の流れが大きく変わり、郊外や地方での暮らしにも注目が集まってきました。そんな状況下、東京エリアのマンション価格は下がったのかといえば、実はそうでもありません。新築マンション人気は依然高く、中古マンションも販売戸数、物件価格ともに大きく伸びているのです。コロナ禍の2020年マンション市場で人気を集めたエリアはどこなのか? こんな時代だからこそ、これから人気を集めそうなエリアはどこなのか? 不動産のスペシャリストにお伺いしました。

東京では7カ月連続で中古マンション価格上昇

新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄された2020年。全国一斉の小中高校の臨時休校や緊急事態宣言発令にともなう外出自粛、テレワークの普及などによって家で過ごす時間が増えた一年でもありました。

営業時間短縮や休業を余儀なくされた飲食店の苦境が繰り返し話題になりましたが、不動産市場も例外ではなく、感染対策としてモデルルームが閉鎖されるなどで、マンションの販売活動が一時期大きく縮小しています。

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)の調査によると、4月の首都圏の中古マンションの成約件数は前年同月比52.6%減の1629件。減少幅は1995年3月(35.2%)を上回る過去最大のものでした。しかし、6月以降は持ち直し、11月の成約件数は1990年5月の機構発足以来、過去最高となる3620件。前年同月の数字と比べても、14%の2ケタ増となり、10月に続いて前年同月を上回る結果となっています。

地域別の動向を見ると、横浜及び川崎市と、それ以外の神奈川県エリア、埼玉県エリアが大幅に増えており、「㎡単価」も各地域で上昇。とりわけ、東京都区部と多摩は7カ月連続、横浜及び川崎市と埼玉県では6か月連続で前年同月を上回っています。

郊外人気は一戸建て中心。マンション人気は…

郊外のマンションと一戸建て

「首都圏のマンション市場は、急速に回復しています。マンション市場はもともと、新築・中古がまったく別の動きをするわけではありません。どちらかが好調になれば、もう一方もつられて動く。住み替え需要が高まらないと、中古マンション自体が市場にでてきません。そのため、中古マンション市場の活性化は、新築マンションの売れ行きにも影響されます」

こう解説するのは、不動産コンサルタントの岡本郁雄氏。コロナ禍のテレワーク増加で“郊外人気”が注目されましたが、実は郊外に目を向けているのはどちらかというと、一戸建てを購入する層。マンションの場合も、少しでも広いスペースを確保できるよう、都心から離れるという動きはありますが、逆に『長時間かけて通勤したくない』という思いから、通勤しなくてはいけないとしても、その時間が短くてすむ、都心のオフィスに通いやすいエリアに引っ越す動きもみられるのだとか。

「新型コロナウイルスの感染拡大は、夫婦共働きで世帯年収が1000万円~2000万円という“パワーカップル”にも影響を及ぼしています。今は大丈夫でも将来、収入がダウンするかもしれない。だったら、無理して7000万円の物件を買うよりも6000万円、6000万円より5000万円と、身の丈にあった予算を組んで、マイホームを手に入れたいと考える人が増えています。こうした中、人気が高まっているのが、豊洲・有明・勝どきなどの湾岸エリアの大規模マンションです」

なぜいまさら…あのエリアの人気が再燃した理由

豊洲エリアのマンション群

湾岸エリアといえば、かねてから人気が高いエリアとして知られていますが、かつてのステータスとしての“湾岸タワマン”需要ではなく、住みやすさを冷静に考え、改めて良さが見直され、人気が加速しているそうです。

「湾岸エリアには、専用の中庭や共用施設があり、子どもと気軽に遊べて、テレワークにも便利環境が整っているような大規模マンションが次々に登場しています。都心のオフィスゾーンにアクセスしやすく、家族との時間やオフタイムを充実させやすい。快適な住環境と、通勤の便利さを両立できるため、子育て世代にとって、住まいとしてのコストパフォーマンスが非常に高いんです」

また、湾岸エリアの人気の背景には「生活利便性の向上」もあると、岡本さんは指摘します。

例えば、有明エリアは国家戦略特区として住・商複合の再開発が進められており、2020年8月には商業施設や劇場型ホール、日帰り天然温泉を備えるホテルなどで構成された大型複合施設「有明ガーデン」がオープン。飲食店やファッション・雑貨店を中心に、200店舗以上のショップ&レストランが並び、都内最大級の旗艦店「無印良品 東京有明」など話題の新店が続々と出店。ショッピングからエンタメまで堪能できる一大拠点となっています。

一方、豊洲では再開発プロジェクト「豊洲ベイサイドクロス」が2020年8月に開業。既存の「ららぽーと豊洲」とあわせて、豊洲エリアの玄関口としてのにぎわいを創出。住む人・働く人・訪れる人、多様な客層の多彩なニーズに応える充実した飲食・物販ゾーンを展開しています。

「湾岸エリアのマンションの多くは新築時よりも資産価格が上昇しており、新築で購入した人で大きな売却損が出るケースは少ないです。新築で大規模マンションを買った人も、10年ぐらい経つと、家族の年齢や構成が変化するとともに年収がアップし、より広い面積や条件の良い部屋を求めて、同じ棟内で住み替えるといったケースもよく見られます」

都心勤めの会社員はそう簡単には減らない

通勤ラッシュ

今後、こうした湾岸エリアの人気に陰りがでる要因としては、「都心で働くビジネスパーソンの減少」が懸念されています。

「緊急事態宣言以降も、リモートワークやサテライトオフィスの活用を継続している企業も一部ありますが、多くの企業は変わらず、出勤スタイルに戻しています。今後、都心勤務のビジネスパーソンが大幅に減ることは当面考えづらいでしょう。

成長の余地がなくなると当然、衰退がはじまることが考えられますが、湾岸エリアに関しては月島や豊海で市街地開発が計画されていて、開発の余地がまだまだあると考えてよいでしょう。“未完成の街”ならではの魅力があります。

また銀座や日本橋など“大人の街”に近いことも湾岸エリアのメリット。50代以上のシニア層に支持されています。フラットで誰もが暮らしやすい街は、これからも注目を集めるのではないでしょうか」

狙い目の通勤しやすい郊外

柏の葉

さらに、都心からそこそこ離れているけれど、通勤が便利な郊外も人気が高まっていると、岡本さんは指摘します。

「新浦安や海浜幕張などのベイフロントエリアは大手町や東京駅などへのアクセスが良く、マンションの価格帯としても手ごろな物件が多く、人気があります。数としてはさほど多くありませんが、勤務形態としてテレワークが完全に定着した企業に勤めている人であれば、通勤時間を気にせずに、湘南や辻堂、鎌倉あたりに拠点を構えるという選択肢も浮上します。

また、つくばエクスプレス沿線の柏の葉やおおたかの森エリアも、駅前にショッピングモールやシネマコンプレックスなどの商業施設が充実し、居住性が高まっている上、大規模マンションが次々に登場し、物件の選択肢も広がっています」

コロナ禍をものともせず、好調に売れてきたエリアの共通項は「居住性」と「値ごろ感」。便利で安心な暮らしを実現したいという、子育て世代にとって、こうした居住性が高いエリアの大規模マンションが選ぶのは、コストパフォーマンスの高さがあってこそだと言えそうです。

 

取材・文:島影真奈美

不動産コンサルタント 岡本郁雄

ファイナンシャルプランナーCFP®、中小企業診断士、宅地建物取引士、公認 不動産コンサルティングマスター。不動産コンサルティング会社などを経て2004年に独立。不動産領域のコンサルタントとして、マーケティングやコンサルティング、住まいの選び方などに関する講演や執筆、メディア出演など幅広く活躍中。神戸大学工学部卒。

公開日 2020年12月24日
更新日 2023年2月14日

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