住宅ローン控除と医療費控除、ふるさと納税を併用するメリットとは。計算方法と節税ポイントを解説

住宅ローン控除と医療費控除、ふるさと納税を併用するメリットとは。計算方法と節税ポイントを解説

住宅ローンを組んで家を建てると、一定の要件を満たす場合のみ「住宅ローン控除」を利用できます。これは取得税・住民税における優税制度のひとつですが、医療費控除やふるさと納税と併用することで、さらに大きな節税メリットを受けられるのがポイントです。今回は、住宅ローン控除と医療費控除の仕組みや、ふるさと納税を併用するメリットを解説します。

住宅ローン控除の仕組み

まずは、住宅ローン控除の仕組みと計算方法をお伝えします。これからマイホームの購入やリフォーム・リノベーションを検討している方は、同制度の内容をしっかりと把握しましょう。

住宅ローン控除額の計算の仕方

住宅ローン控除とは、新築物件・中古物件の取得、またはリフォーム・リノベーションを行った際に、ローン残高に対する一定の金額が所得税から差し引かれ、還付される制度のことです。住宅に関する税額控除制度の一種で、「住宅ローン減税」とも呼ばれます。

住宅ローン控除を利用した場合、ローン残高(年末残高)の1%が所得税から控除されます。控除上限額は40万円で、控除期間は10年間です。例えば、ローン残高が3000万円なら「3000万円×1%=30万円」が所得税から控除されます。もし納める予定の所得税が30万円未満なら、控除不足額が住民税から差し引かれます。一度情報を整理してみましょう。

住宅ローン控除計算例

ローン残高本来納付する
金額
控除される金額実際の納付金額
所得税3000万円20万円30万円0円
住民税3000万円25万円(※1)10万円15万円

※1.住民税の控除上限額は13万6500円

上記はローン残高3000万円、本来納付する所得税が20万円、住民税が25万円の想定例です。まず、ローン残高が3000万円のため、控除額は30万円となります。20万円の所得税から30万円を差し引くと、10万円の控除不足額が発生。この場合、25万円の住民税から控除不足額を差し引きます。

本来納付する金額は、所得税と住民税を合わせて45万円でした。住宅ローン控除を利用するだけで、最終的な納付額は15万円となります。なお、2019年10月1日に施行された消費税引き上げにともない、住宅ローン控除の拡充が行われました。

適用対象が「2019年10月1日〜2021年12月までに取得した住宅」の場合、控除期間が13年間まで延長されます。さらに11年〜13年目の控除率は、(※2)建物購入価格の2〜3%まで引き上げられます。注意点として、住宅ローン控除の利用初年度は確定申告が必要です。申請期限も限られるため、必要書類などを早めに準備しておきましょう。

※2.一般住宅は4000万円、認定住宅は5000万円の限度額設定あり

医療費控除とは

住宅ローンだけでなく、医療費控除について知っておけば、日々の生活費も軽減される
住宅ローンだけでなく、医療費控除について知っておけば、日々の生活費も軽減される

医療費控除は、1年間に支払った医療費が10万円または総所得金額の5%を超える場合、超過分を最大200万円まで所得控除できる制度です。医療費控除の仕組みと計算方法、確定申告時に必要な書類についてお話します。

医療費控除額の計算の仕方

医療費控除の基本的な計算式は、以下の通りです。

『(※1)実際に支払った医療費-(※2)補填金』-(※3)10万円または(※4)総所得金額の5%=医療費控除額

【解説】
※1.実際に支払った医療費:治療代や薬代、病院に移動するための交通費など
※2.補填金:生命保険・損害保険で補填される保険金。損害賠償金や出産育児一時金、各種給付金など
※3.課税所得が200万円以上の場合:10万円が差し引かれる
※4.課税所得が200万円未満の場合:総所得金額の5%が差し引かれる
算出した医療費控除額をもとに、実際に手元に戻ってくる還付金を計算します。

以下の条件でシミュレーションしてみましょう。

【シミュレーション条件】
・実際に支払った医療費:50万円
・補填金:20万円
・総所得:600万円
・各種所得控除額:200万円

STEP1.医療費控除額の計算

まずは医療費控除額を算出しましょう。課税所得が600万円のため、ここでは10万円を差し引きます。計算式に当てはめると「50万円(実際に支払った医療費)-20万円(補填金)-10万円=20万円(医療費控除額)」となります。

STEP2.所得税率を確認

課税所得をもとに、所得税率を確認します。課税所得とは、総所得から「各種所得控除額」を差し引いた金額です。給与所得者の場合、源泉徴収票に記載されている「給与所得控除後の金額」が総所得、「所得控除の額の合計額」が各種所得控除額にあたります。

さて、実際に所得税率を確認してみましょう。今回のケースでは、「600万円(総所得)-200万円(各種所得控除額)=400万円(課税所得)」となります。以下の対応表から400万円に対応する所得税率を確認します。

課税所得額所得税率
195万以下5%
195万〜330万円10%
330万〜695万円20%
695万〜900万円23%
900万〜1800万円33%
1800万〜4000万円40%
4000万円以上45%

課税所得400万円の場合、所得税率は「330万〜695万円」の20%です。これをもとに還付金を計算します。

STEP3.還付金の計算

還付金は「医療費控除額×所得税率」で算出するため、「20万円(医療費控除額)×20%(所得税率)=4万円(還付金)」となります。したがって、最終的に4万円が手元に戻ってくる計算となります。

セルフメディケーション税制とは

セルフメディケーション税制とは、1年間に特定の成分を含む「OTC医薬品」を1万2000円以上購入した場合、所得控除の対象となる新しい制度です。厳密には1万2000円以上の金額が、所得から控除(上限8万8000円)されます。

セルフメディケーション税制を利用することで、所得税の一部が還付されたり、住民税の負担が軽くなったりするメリットがあります。本制度が施行される2017年1月以前は、1年間でかかった医療費が10万円以上の場合のみ医療費控除を利用できました。

この条件だと、家計に対する医療費の負担が大きい場合も控除が受けられないケースが散見されました。そのため、「医療費控除の特例」が施工され、控除を適用されるハードルが下がりました。

医療費控除の対象である「医療費が10万円以上」かつ「OTC医薬品の購入額が1万2000円以上」である場合、医療費控除とセルフメディケーション税制、どちらの控除制度を利用するか選択しなければなりません。ただ、基本的に医療費が10万円以上ならば、従来の医療控除を利用する方が節税効果が高くなります。

医療費控除の確定申告に必要な書類

医療費控除の申請に必要な書類は、以下の5点です。

・医療費支払いの証明書類
・医療費控除の明細書
・源泉徴収票
・確定申告書A
・本人確認書 (運転免許証やパスポートなど)

上記のうち、「医療費支払いの証明書」と「本人確認書」はすでに手元にあるはずです。「医療費控除の明細書」と「確定申告書A」は税務署から、源泉徴収票は勤務先から取り寄せる必要があります。なお、病院や薬局からもらったレシート・領収書の提出は不要ですが、申請後5年間は提示・提出を要求される可能性があります。大切に保管しておきましょう。

住宅ローン控除と医療費控除を併用するとどのくらい節税できる?

控除制度を利用して、住宅ローンや家族の医療費の支払いをお得にできるか調べる
控除制度を利用して、住宅ローンや家族の医療費の支払いをお得にできるか調べる

住宅ローン控除で全額還付となった場合、「医療費控除は申請しない」という方が見られます。ただ、医療費控除は住宅ローン控除適用前の所得税額に影響するため、同時申請することで節税メリットが生まれます。

住宅ローン控除と医療費控除を同時申請すると「医療費控除→住宅ローン控除」の順番で計算され、医療費控除後の所得税額をもとに、住宅ローン控除額が決まります。医療費控除は住宅ローン控除額に影響を与えることがわかります。

また、住宅ローンの控除額は所得税から差し引かれますが、差し引けない額(控除不足額)は13万6500円を限度額として住民税から差し引かれます。こちらでは、上記のような各控除制度を併用するメリットや、併用すべきケースについてお話します。

住宅ローン控除と医療費控除の同時申告で税金が軽減されるケース

基本的に住宅ローンと医療費控除は、同時申請した方がお得になります。ローン残高3000万円、本来納付する所得税が20万円、住民税が25万円の方を想定して控除額を試算してみましょう。

この場合、「3000万円×1%(税率)=30万円」が所得税から控除。「20万(所得税)-30万円(控除額)=▲10万円(控除不足額)」となり、控除不足分は25万円の住民税から差し引かれ、最終的な納付額は15万円となります。これが住宅ローン控除のみ申請したパターンです。

同じ条件で、住宅ローン控除と医療費控除を同時申請したらどうなるのでしょうか。まずは医療費控除から計算されます。医療費控除を申請して所得税が10万円になった場合、「10万(所得税)-30万円(控除額)=▲20万円(控除不足額)」となります。

25万円の住民税から控除不足額を差し引きますが、その上限は13万6500円。つまり最終的な納付額は、「25万円(住民税)-13万6500円(限度額)=11万3500円(納付額)」となります。住宅ローン控除のみ申請した場合の納付額は15万円ですが、同時申請すると11万3500円です。各控除制度を併用するだけで、3万6500円の節税効果が期待できます。

課税所得が大きいほどお得になる

住宅ローン控除は税制控除、医療費控除は取得控除と明確な違いがあります。したがって、課税所得が大きいほど医療費控除額が増え、比例して住宅ローン控除の節税効果も大きくなります。年間収入(実施的な課税所得)が多い方ほど、住宅ローン控除と医療費控除の併用メリットが大きくなるでしょう。

ふるさと納税も併用可能か?

住宅ローン控除とふるさと納税は併用可能です。ふるさと納税とは、全国の自治体に寄附したお金の全額、または一部を所得税・住民税から控除できる仕組みのこと。控除を受けるには確定申告が必要です。ただ、年末調整を受ける給与所得者の場合は、寄付先が5団体までなら「ワンストップ特例制度」を利用することで、確定申告が不要となります。

考え方は医療費控除の併用と同じです。ふるさと納税により所得税・住民税が控除された後、それをもとに住宅ローン控除の控除額を算出します。結果的に住民税の納付額を節約することが可能です。詳しい内容はふるさと納税の民間ポータルサイトに解説があるため、興味のある方はぜひご参照ください。

ふるさと納税を併用するときの注意点

住宅ローン控除の申請初年度には、確定申告が必要です。そのため、ワンストップ特例制度が無効になり、住宅ローン控除を満額受けられない可能性があります。ワンストップ特例制度を利用した場合、ふるさと納税の控除は住民税が対象となります。

一方、利用しない場合は所得税・住民税の両方から控除されるため、住宅ローン控除の計算に影響を与えます。寄付額によっては、住宅ローン控除による節税メリットを打ち消してしまうことがあるため注意しましょう。

公開日 2020年7月8日
更新日 2023年3月22日

#ローン

LogRenoveをフォローする

販売中のおすすめリノベ物件