住宅借入金等特別控除とは? 住宅ローン控除(減税)の仕組みと適用要件を解説

住宅借入金等特別控除とは? 住宅ローン控除(減税)の仕組みと適用要件を解説

住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)について「どんな仕組みなの?」「活用することで、どのくらいお得になるの?」と気になっている方も多いと思います。

住宅ローン控除を活用すれば、毎年かかる税金の負担を減らすことができます。この記事では、住宅ローン控除の仕組みと適用要件を解説していきます。

「住宅借入金等特別控除」とは?

住宅借入金特別控除とは、個人が住宅ローン等を利用して、住宅を取得・増改築等した際に受けられる控除です。

住宅借入金等特別控除を受ければ、毎年払わなくてはならない所得税・住民税を差し引けるので、節税することができます。

住宅借入金等特別控除を受けるには、一定の要件を満たす必要があります。控除額は、住宅ローンの年末残高をもとにして計算されます。

住宅の購入は大きな買い物になる分、受けられる控除も大きいので、是非活用したいものです。

「住宅借入金等特別控除」は通称「住宅ローン控除(減税)」とも

住宅借入金等特別控除は、住宅ローン控除(減税)とも呼ばれます。「住宅借入金等特別控除」よりも「住宅ローン控除」のほうが呼びやすいため、住宅ローン控除と呼んでいる方も多いはずです。

住宅借入金等特別控除の仕組みを解説

上では住宅借入金等特別控除の概要を説明しましたが、ここからは「控除」と「期間」の仕組みについて説明します。

税額から直接差し引く「税額控除」 所得控除、配偶者控除

住宅借入金特別控除の最大の特徴は「税額控除」で、所得税から差し引かれるということです。控除には、所得控除と税額控除の2種類があります。

所得控除は所得から一定額を引くものですが、税額控除は税額から直接差し引くものです。

住宅借入金特別控除は税額控除ですので、「所得税が安くなる」という特徴があります。ここでは税額の計算法には触れませんが、まずは「住宅借入金特別控除は税額控除で、税金が安くなるもの」と覚えておいてください。

ちなみに配偶者控除というのは所得控除の一種です。配偶者控除では、配偶者がいる場合に所得控除が受けられます。

控除可能額が上回る場合は「住民税」から控除される

住宅借入金等特別控除では、所得税よりも控除可能額が上回る分については、住民税からも控除されます。

住宅借入金等特別控除には、「控除可能額」という上限額が設けられています。まずは所得税から差し引かれますが、それでも引ききれなかった分は住民税からも控除されます。

例えば、住宅借入金等特別控除の控除可能額が30万円で、所得税が20万円の場合、所得税よりも控除可能額が上回っています。

ですので、まだ控除しきれていない10万円分(30万-20万円)は住民税からも控除されるのです。ただ住民税には、控除の上限が13万6500円までと定められています。

控除の期間は10年間継続する

住宅借入金等特別控除は期間が定められていて、最大10年間継続します。ただし、消費税が10%になったことへの対策で、2019年10月1日から2020年12月31日までの期間に限り、控除期間が13年に延長されました。

消費税10%で住宅を取得して、2019年10月~2020年12月31日までに住み始れば、控除期間は13年に延びます。

最新の制度について

令和2年、新型コロナウイルスによる各業界への影響が大きかったため、住宅借入金等特別控除にも緩和措置が設けられました。

新型コロナウイルスの影響を受け、入居が遅れたときも、2021年12月31日までの入居であれば13年間の控除が受けられるようになりました。

ただし定められている要件に合わなければ、対象になりません。定められている要件とは、以下の通りです。

  • 注文住宅を新築する場合、2020年9月末までに契約を済ませていること
  • 分譲住宅、既存住宅を取得する場合、増改築する場合は、2020年11月末までに契約を済ませていること
  • 新型コロナウイルス感染症の影響で、住宅への入居が遅れたこと

これらの要件に合う場合、2021年12月31日までに入居すれば、控除期間13年の対象です。

住宅借入金等特別控除の適用要件について

住宅借入金等特別控除を受けるには、適用要件を満たす必要があります。ここでは、住宅借入金等特別控除の対象になる住宅と適用要件について説明します。

住宅借入金等特別控除の対象となる住宅とその適用要件

住宅借入金等特別控除の適用要件の詳細を新築、中古、増築・リフォーム別で詳しく説明します。

新築住宅の場合

新築住宅の適用要件は、以下の通りです。

  • 住宅を取得した日から6カ月以内に居住を開始し、適用を受ける各年の年末まで居住していること
  • 特別控除を受ける年の合計所得が、3000万円以下であること
  • 住宅の床面積が50㎡以上あること
  • 床面積の半分以上の部分が、自身が住むための場所であること(店舗や事務所などと併用する住宅の場合)
  • 住宅ローンの返済期間が10年間であること

中古住宅の場合

中古住宅の場合は、新築住宅の適用要件に加えて、下記を満たす必要があります。

  • マンションなどの耐火建築物は、建築から取得の日までの期間が25年以下であること
  • 耐火建築物以外は、建築から取得の日までの期間が20年以下であること
  • 一定の耐震基準、もしくはそれに準ずる耐震基準に適合する建物であること
  • 生計を共にする親族などからの取得でないこと
  • 贈与でないこと

「一定の耐震基準に適合する」とは、以下を満たす必要があります。

  • 耐震診断を受け、耐震基準適合証明書が発行されたもの
  • 住宅性能評価書に記される耐震等級が1~3のもの
  • 既存住宅売買瑕疵担保責任保険契約が締結されているもの

ただ、2014年度の税制改正によって、耐震基準または経過年数基準(耐火建築物は、取得の日までの期間が25年以下であることなど)を満たさない中古住宅を取得しても、所要の手続きを行えば適用できると決められています。

増築・リフォームの場合

増築・リフォームの場合、新築住宅の適用要件に加えて、下記の要件を満たすことで住宅借入金等特別控除を適用されます。

  • 自分で取得して、自分で居住するためのリフォームであること
  • 大規模な修繕と大規模な模様替えのリフォームであること(柱/床/はり/屋根/階段/のいずれかを半分以上修繕・模様替えする)
  • 建築基準法施工令の構造強度等に関する規定、または地震に対する安全性に係る基準に適合させるための一定の修繕、模様替えの工事であること(2002年4月1日以後に住み始めた場合)
  • マンションなどの区分所有建物のうち、所有する部分の床/階段/壁の半分以上について行う一定の修繕・模様替えの工事であること
  • 家屋の居室、調理室、浴室、便所、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床/壁の全部について行う修繕・模様替え工事であること
  • 一定のバリアフリー改修工事であること
  • 一定の省エネ改修工事であること
  • 居住部分の工事費用が100万円を超えていること
  • 居住部門のリフォーム費用が2分の1であること

実家のリフォームなど、本人が別の住宅に住んでいるケースは、適用外になるので注意しましょう。

住宅借入金等特別控除の対象ローンとは

住宅借入金等特別控除では、住宅購入のための借入金の全てが控除の対象になるわけではありません。控除の対象となる対象ローンも限定されています。

  • 銀行、信用金庫、労働金庫、信用協同組合、農業協同組合、漁業協同組合、水産協同組合、株式会社商工組合中央金庫、生命保険会社、損害保険会社、信託会社、信用金庫連合会など金融機関からの借入金
  • 独立行政法人住宅金融支援機構、地方公共団体、独立行政法人福祉医療機構、国家公務員共済組合、国家公務員共済組合連合会など指定基金からの借入金

いわゆる「住宅ローン」でなければ住宅借入金等特別控除の適用とならないところに注意が必要です。

住宅借入金等特別控除の対象外となるケースとは? 例で解説

住まいを取得したとしても、「住宅借入金等特別控除」の対象外になるケースをご紹介します。

【住宅】対象外

「取得した住まいに自分で住む」というのが住宅借入金等特別控除の対象ですので、以下の場合は控除適用対象外です。

  • 別荘やセカンドハウス
  • 貸家向け物件
  • 親のために建てた家(その家に自分は住まない)

【ローン】対象外

住宅借入金等特別控除の適用を受けるには、いわゆる「住宅ローン」を組まなければなりませんので、以下は対象となりません。

  • 会社からの借入(無利子または利率0.2%未満)
  • 返済期間が10年未満

その他

身内からの住宅取得の場合も、住宅借入金等特別控除の適用外です。具体的には、次の通りです。

  • 贈与による取得、同一生計親族などからの取得
  • 住んでいた年と、その前後2年ずつの5年間で、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けている場合

具体的な控除額(減税額)はいくらになる?

住宅借入金等特別控除の控除額の計算方法を知っておくと自分はどれくらい減額されるのかをシミュレートできる
住宅借入金等特別控除の控除額の計算方法を知っておくと自分はどれくらい減額されるのかをシミュレートできる

ここでは、住宅借入金等特別控除の控除額がどのように算出されるのかを解説していきます。

住宅借入金等特別控除の計算方法

住宅借入金等特別控除を導く計算式は、以下の通りです。

控除可能額=住宅ローン年末残高×1%(控除率)

住宅ローン残高が3000万円ある場合は、以下のように計算します。

3000万×1%=30万円

1年間で30万円が控除されることがわかります。控除対象になる最大の住宅ローン残高は4000万円で、年間の最大控除額は40万円です。

年末に住宅ローン残高が6000万円あったとしても、最大控除可能額は40万円ですので注意してください。

控除額(減税額)のシミュレーションしてみよう

シミュレーションをして、住宅借入金等特別控除でどのように減税されるのかを見てみましょう。以下の条件でシミュレーションします。

  • 住宅借入金等特別控除可能額「30万円」
  • 支払うべき所得税「20万円」

控除可能額は30万円ですが、支払うべき所得税が20万円なので「引ききれない(すべてを控除できない)」状態です。

そのため、控除しきれていない10万円分は「住民税」からも引かれます。前提となる控除の優先順位ですが、まずは所得税から控除され、引ききれなかった分は住民税からも差し引きされます。

ちなみに住民税の控除限度額は13万6500円となっているので、これ以上を超える住民税は控除されません。

住宅借入金等特別控除の控除期間について

ここからは、住宅借入金等特別控除の期間についても説明をしていきます。

控除期間の計算方法

住宅借入金等特別控除の控除期間は、取得した住宅に住み始めた時期によって異なります。

  • 2014年1月1日~2019年9月30日に住み始めた場合、控除期間は10年
  • 2019年10月1日~2020年12月31日までに住み始めた場合、控除期間は13年

控除期間が13年で受けられるのは、消費税が10%の住宅を取得した場合に限ります。最新の制度では、新型コロナウイルスの影響によって入居が遅れた場合、要件を満たせば2021年12月31日までに入居すればよいことと定められました。

住宅借入金等特別控除を受けるための手続き方法

住宅借入金等特別控除を受けるには、必要な手続きがあります。ここでは、手続の具体的な流れと必要な書類を説明していきます。

控除(減税)手続きの具体的な流れ

控除を受けるための手続きの具体的な流れは、以下の通りです。

  • 住宅を取得したら、6カ月以内に入居する
  • 控除を受けるための必要書類を取得する
  • 入居した翌年に確定申告書類を作成、必要書類を添付して税務署で確定申請する

必要書類を確認しよう

住宅借入金等特別控除を受けるために必要書類は、以下の通りです。

  • 住民票の写し(市区町村役場で入手)
  • 残高証明書(金融機関等で入手)
  • 登記事項説明書(法務局で入手)
  • 請負(売買)契約書等
  • 給与等の源泉徴収票等(職場で入手)
  • 耐震基準適合証明書(建築士等に依頼して入手)
  • 既存住宅性能評価書(登録住宅性能評価機関で入手)
  • 既存住宅売買瑕疵保険の付保証明書(住宅瑕疵担保責任保険法人で入手)

必要書類はとても多いので、申請をする際に慌てないよう、予め書類を揃えておきましょう。

【確定申告】について

住宅借入金等特別控除を受けるには、初回の確定申告は必須。また、2回目以降は申請手続きが簡単になる
住宅借入金等特別控除を受けるには、初回の確定申告は必須。また、2回目以降は申請手続きが簡単になる

住宅借入金等特別控除を受けるには、初回の確定申告が必須です。確定申告は税務署で行えますが、郵送や電子申請でもできます。

ただ、確定申告が初めてで、やり方がよく分からず不安という方は、税務署で相談しながら手続きしましょう。

なお、本格的な確定申告シーズンに入る前なら、税務署も混んではいません。年が明けたら、早いうちに相談に行けるようにしておくと安心です。

2回目以降の申請手続きは簡単になる

会社員の場合、2年目以降は勤務先に以下の書類を提出しましょう。

  • 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
  • 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

給与所得者でない方は、確定申告書に以下の書類を添付してください。

  • (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
  • 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

住宅借入金等特別控除を適用する際のお得なポイント

最後に、住宅借入金等特別控除を適用する際に、注意すべきことを説明していきます。

繰り上げ返済をした場合の住宅ローン控除(減税)

住宅借入金等特別控除を受ける要件は、ローンの返済期間が10年以上残っていることです。繰り上げ返済をすると、控除の対象外になるのを早めてしまいます。

最大期間控除を受けたほうがいいのか、繰り上げ返済を受けたほうがいいのかはそのときの金利次第です。

ただ、住宅借入金等特別控除の期間が切れるまでに一定額貯金して、繰り上げ返済をするという方法もあります。

繰り上げ返済は住宅ローン残高の「元本」に充当されます。元本が減れば利息が減り、結果的に総支払額を低く抑えることができます。

もし可能なら、控除された金額を貯蓄しておき、繰り上げ返済に充てるのもいいでしょう。

ローンを使用をしない場合は「投資型減税」を利用しよう

ローンを利用しないで自己資金だけで住宅を購入すると、住宅借入金等特別控除は利用できません。

ただ、耐久性や省エネルギー性に優れた住宅を自己資金で購入する場合は「投資型減税制度」によって所得税が控除されます。

耐久性や省エネルギー性に優れた住宅とは、行政の認定を受けた長期優良住宅・低酸素住宅のことです。

1年で最大65万円控除され、対象期間は1年ですが、引ききれなかった額は翌年分の所得税からも差し引かれます。あくまで所得税からの控除ですので、住民税は変わりません。

公開日 2020年8月19日
更新日 2023年3月22日

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