住宅ローン審査。奨学金返済中の場合、影響はあるのか?

住宅ローン審査。奨学金返済中の場合、影響はあるのか?

奨学金の返済中でも住宅ローンを組むことは可能です。ただし、過去の返済状況によっては審査で不利になる場合があります。また、現在の奨学金の残高が住宅ローンの借入可能額へ影響を与える点にも留意しましょう。ここでは、奨学金を利用している方へ向けて、住宅ローンの申し込みや審査で気をつけておきたいポイントを紹介します。

奨学金を返済中の場合、住宅ローンを組むことができるのか?

学費の貸与や給付を受けられる奨学金制度。一般的な金融機関からの借入とは異なり、なかには利息なしで貸与を受けられる制度もあります。学生時代に奨学金の貸与を受けて進学した方は、社会人になっても引き続き返済を続けていることも。現在も奨学金を返済中で、今後さらに住宅ローンを組む予定がある――そんなとき奨学金を返済しながら住宅ローンを組むことはできるのでしょうか。

結論からいうと、奨学金を返済中の方でも、安定した収入があれば住宅ローンを組める可能性があります。住宅ローンや自動車ローンをはじめとした各種ローンの審査では、安定した収入があり、かつ過去の返済が滞りなく行われていることを確認します。奨学金と住宅ローンの両方を問題なく返済できる能力があれば、審査に通るはずです。利用した奨学金制度の種類を確認したうえで、申し込みを検討しましょう。

奨学金制度には種類がある

代表的な奨学金制度として知られているのは、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金です。日本学生支援機構は文部科学省所管の独立行政法人であり、学生や留学生に対する支援を行っています。こちらの奨学金には、主に「給付型」と「貸与型」という種類があります。給付型の奨学金は、全額が学生に支給される仕組みであり、利用後に返済する必要がありません。

それに対して、貸与型の奨学金は利用後に返済する必要があります。貸与型の奨学金にはいくつかの種類があります。利子のつかない「第一種」と、利子がつく「第二種」です。さらに、第一種と第二種に加えて「入学時特別増額」の制度もあります。

入学時特別増額は、入学月に利子つきで増額ができる制度です。このほかに、海外留学する学生を対象とした、第一種と第二種の奨学金があります。返済が必要な貸与型の奨学金を学生時代に利用していた方は、奨学金の種類が第一種と第二種のどちらにあたるか確認しておきましょう。

奨学金制度を利用した「履歴」が、住宅ローン審査へ与える影響とは?

過去に奨学金の延滞や遅延などの情報は、信用情報機関に記憶されており、各種ローン審査時に支払い能力を判断するために参照される
過去に奨学金の延滞や遅延などの情報は、信用情報機関に記録されており、各種ローン審査時に支払い能力を判断するために参照される

過去に奨学金の延滞・滞納などの“金融事故”があった場合は、信用情報機関と呼ばれる機関に記録が残されています。「全国銀行個人信用情報センター」をはじめとした信用情報機関は、個人の信用情報の情報提供を行い、各種ローンの審査時に支払い能力を判断するために参照されます。奨学金を利用した履歴に問題があると、住宅ローン審査で不利になることも。ここからは、奨学金の履歴と信用情報機関について、押さえておきたいポイントを紹介します。

延滞・滞納している場合は履歴が記録されている

各種ローンの借入やクレジットカードの利用情報は、個人信用情報機関に記録されています。信用情報機関の情報は、金融機関やクレジットカード会社などから提供され、請求に応じて照会できる仕組みです。国内には、下記の3つの信用情報機関があります。

・全国銀行個人信用情報センター(KSC)
・株式会社シー・アイ・シー(CIC)
・株式会社日本信用情報機構(JICC)

これらの信用情報機関が情報提供を行う目的は、各種ローンの審査時に個人の支払い能力を的確に判断することです。過去の返済が滞りなく行われていれば、今後も適切に支払いが行われ、貸与したお金が問題なく返還されると予想されます。

また、このように支払い能力を的確に判断することは、利用者の破産の予防にもつながります。信用情報機関は、一人ひとりが安全に金融取引を行うためにも役立っています。このような事情から、奨学金の返済中に住宅ローンを組む予定があるなら、過去の返済状況を見直してみましょう。

3カ月以上の延滞滞納が確認されるとブラックリスト入りする

一般的に、支払いの延滞・滞納が2~3カ月以上続くと、信用情報が「ブラックリスト入り」と呼ばれる状況になります。ブラックリストとは、信用情報機関に金融事故の情報が記録されている状態のことです。実際に“ブラックリスト”と呼ばれるリストが存在するわけではありませんが、ネガティブな情報が記録されることにより、金融サービスを利用するうえで多くの支障をきたします。

ブラックリスト入りすると審査に通過できず、あらゆる借入が不可能となります。ローンやクレジットカードを利用できなくなるため注意が必要です。もちろん、住宅ローンも組めません。奨学金の支払いを延滞・滞納するおそれがあるときは、早めに相談センターの窓口へ問い合わせすることが大切です。

滞納履歴(信用情報)が消えるのは完済から5年後

借入やクレジットカードの支払いを延滞・滞納してしまった場合、信用情報機関から履歴が消えるタイミングは、完済から約5年後です。信用情報機関によって履歴が消えるタイミングが異なるといわれるため、あくまで5~10年を目安としましょう。一度ブラックリスト入りしてしまうと、その後は数年間にわたり履歴が残り続けるため、完済してもすぐに問題を解決できるわけではありません。

また、個人で信用情報機関の履歴を消したり、履歴が消えるタイミングを早めたりする方法はありません。過去に奨学金の支払いを数カ月にわたり延滞・滞納している場合、5~10年は住宅ローンを組めない可能性があります。

信用情報を自分で確認する方法は?

奨学金の返済中に住宅ローンを組むにあたり、自分の信用情報を自分で確認しておきたい方は、信用情報機関に情報開示を申し込む方法があります。信用情報が登録されている可能性があるのは、「全国銀行個人信用情報センター(KSC)」「株式会社シー・アイ・シー(CIC)」「株式会社日本信用情報機構(JICC)」のいずれかの機関です。個人情報の照会を希望するなら、指定された方法で申し込みしましょう。

申し込みは、インターネットや郵送で手続きを行うほか、本人が窓口へ直接に足を運ぶ方法があります。申込書や身分証明書などの必要書類を提出して、信用情報が記載された「開示報告書」を受け取ってください。なお、信用情報機関によっては、照会できる信用情報の件数が決められている場合があります。早く情報を照会したい場合は、インターネットで手続きを行うのがおすすめです。郵送は時間がかかるため、PCやスマートフォンでの申し込みを検討しましょう。

借入可能額が下がることもある

奨学金制度を利用していると、住宅ローンの借入可能額が下がる可能性があります。そもそも借入可能額とは、住宅ローンで借りられる金額のことです。金額は、申し込みをする本人の年収や返済方法など複数の指標をもとに、金融機関の審査により決定されます。

このとき、金融機関の審査で特に重視されるのが「返済負担率(返済比率)」です。返済負担率とは、本人の年収に対する返済額の比率のこと。金融機関にもよりますが、一般的には返済負担率30~40%であれば借り入れできる可能性があると考えられます。たとえば、住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」では、年収400万円未満の場合30%、400万円以上の場合35%が返済負担率の基準となっています。

ここで注意したいのは、奨学金が返済負担率に影響を与えることです。すでに奨学金の貸与を受けているケースでは、返済額に住宅ローンと奨学金の両方が含められます。そのため、住宅ローンのみのケースと比べたとき、結果として住宅ローンの借入可能額が減額となります。

返済負担率が基準を超えると審査が通りにくい

返済負担率が基準を超えている場合には、住宅ローンの審査に通りにくくなるおそれがあります。前述の「フラット35」を参考にすると、返済負担率は年収400万円未満の場合30%、400万円以上の場合35%が基準です。これを超えると審査で不利になるだけでなく、借り入れしたときに月々の返済の負担が大きくなります。希望の借入額と年間の収入をもとに返済負担率を算出し、適切であるか確認しましょう。

奨学金の返済中に住宅ローンを申し込む際の注意点とは?

奨学金を返済中に住宅ローンを申し込む際、注意点をしっかりおさえて審査をより有利に進めたい。そのためには自分の収入に応じて無理のない返済計画を立てることが大事
奨学金を返済中に住宅ローンを申し込む際、注意点をしっかりおさえて審査をより有利に進めたい。そのためには自分の収入に応じて無理のない返済計画を立てることが大事

奨学金の返済中に住宅ローンを申し込む場合は、どのようなことに注意するべきでしょうか。ここでは、審査をできるだけ有利に進めるために意識したいポイントを紹介します。自分の収入に応じて無理のない返済計画を立て、奨学金と住宅ローンを返還しましょう。

奨学金の利用履歴を申告すること

住宅ローンの申し込みをするときは、必ず奨学金の利用履歴を申告してください。住宅ローンをはじめとした借り入れをする場合、ほかに借金の返済がある方は、その金額や用途などを申告する必要があります。もちろん奨学金を返済中の場合も同様です。ほかに借り入れがあったとしても、金額や用途によっては必ずしも印象が悪くなるとは限りません。それ以上に注意しておきたいのは、奨学金の申告漏れです。

住宅ローンの借り入れで奨学金の申告漏れがあると、本人の信用に問題があるとみなされてしまいます。そもそも、奨学金の返済状況は信用情報機関に記録されているため、加盟会社にも参照できます。意図的に申告しなかったとしても、審査ではもれなくチェックされるはずです。申告漏れがあると審査に落ちたり、希望する金額の借り入れができなかったりするおそれがあります。忘れずに申告しましょう。

住宅ローンを組む際に返済負担率を低くなるようにする

返済負担率を下げるために、奨学金や住宅ローンでの借入金額ができるだけ低くなるように調整しましょう。住宅ローンの申し込み前に、シミュレーションで計算して、無理のない計画を立ててください。

奨学金の完済または残高を少しでも減らす

住宅ローンの審査に通りやすい状態にするなら、奨学金を完済したり、少しでも残高を減らしたりする方法を検討してみましょう。通常、奨学金は一定の返済額を決められたタイミングで返済しています。それに対して、返済のタイミングを繰り上げて早めに支払うことを「繰り上げ返済」と呼びます。

繰り上げ返済を行えば、奨学金の残高を減らしたり、完済までの期間を早めたりできるのがメリットです。さらに、利子がつく種類の奨学金の場合は、期限前に繰り上げた分の金額に対して利息がつかなくなるというメリットもあります。奨学金の繰り上げ返済は、いつでも申し込みが可能です。ただし、繰り上げ返済を行っても、通常の返済のタイミングでは引き続き支払いを行う必要があるため、無理のない範囲で検討しましょう。

住宅の購入金額や頭金、諸費用を見直す

住宅ローンを組むとき、「頭金」を用意する方法があります。頭金とは、住宅価格のうち手持ちの現金(自己資金)で支払う金額のことです。頭金を用意した場合、住宅価格から自己資金を差し引いた分を、住宅ローンで借り入れることになります。頭金を用意するメリットは、住宅ローンの借入金額を減らせることです。月々の返済額を抑えられるだけでなく、利息を減らして総支払額を抑えることにもつながります。

奨学金の金利が住宅ローンの金利よりも低いのであれば、住宅ローンの借入金額をできるだけ抑える目的で頭金を用意するのもひとつの手です。一方で、住宅の購入時に自己資金の負担を増やすと、後ほど生活に必要な資金が不足するといったリスクが生じます。万が一、頭金を用意できなかったとしても住宅ローンは問題なく組めるため、奨学金の返済と併せて無理のない範囲で調整しましょう。

低金利の住宅ローンを組む

住宅ローンの金利の割合は、金融会社や商品により異なります。このとき、金利の低いほうが総支払額を抑えられるのがポイントです。住宅ローンの金利には、主に「固定金利型」「変動金利型」の種類があります。固定金利型は、返済期間中の金利がずっと変わらないのが特徴です。それに対して変動金利型は、一定期間ごとに見直しが行われ、金利が上がったり下がったりします。

基本的には、変動金利型のほうが固定金利型よりも金利が低い傾向にあります。ただし、変動金利型は返済期間中に金利が上がると、契約した当初より返済額が上がる可能性があることに留意しましょう。一方、固定金利型は返済期間中に市場金利が下がっても返済額を下げられません。それぞれのメリット・デメリットを踏まえて、低金利で借り入れできる住宅ローン商品を利用しましょう。

公開日 2020年11月7日
更新日 2023年3月6日

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