【転職と住宅ローン】転職前に借りたほうが無難? 返済中に転職するのはNG?

【転職と住宅ローン】転職前に借りたほうが無難?  返済中に転職するのはNG?

かつて、日本人は転職に消極的と言われていましたが、最近では多くの人が当たり前のように転職しています。とはいえ、住宅ローンでは勤務先の会社や勤続年数が審査対象。転職が住宅ローンにどのように影響するか、気になるところです。

転職前と転職後では働く条件が変わるため、「住宅ローンを組むなら転職前後のどちらがいいだろう」と気になる人も多いと思います。この記事では転職と住宅ローンで悩んでいる人に対し、借り入れや返済中の転職で必要な手続き、転職で収入が減ったときの対策についてご紹介します。

住宅ローンを組むのは、転職前と転職後のどちらがいい?

住宅ローンは申し込みや審査、そして融資実行まで数カ月かかることもあります。その間に転職を考えている場合、「転職前と転職後、住宅ローンの申し込みはどちらがいいのか?」と悩む人も多いことでしょう。まずは住宅ローンを組むタイミングから見ていきましょう。

転職前にローンを組むメリットとデメリット

転職前にローンを組めば勤続年数が評価され審査に通りやすい
勤続年数が長い場合、転職前にローンを組めば審査に通りやすい

転職前に住宅ローンを組む場合、メリットとしては以下の2つがあります。

  • 住宅ローン審査では勤務年数が評価されやすい
  • 転職後に収入が下がる場合、転職前のほうが審査に通りやすい

銀行が住宅ローンの審査を行うとき、転職前の会社で勤務年数が長い場合はその「長さ」が評価されます。住宅ローンは20年や30年といった長い年月をかけて返済していくので、銀行は「返済し続けられるか」を厳しくチェックするのです。そのため1つの会社に長く勤めている場合はその「安定性」も評価されるのです。一般的に銀行が条件とする勤務年数は「1年以上もしくは3年以上」と言われており、転職前の会社でその年数を満たしていれば有利に動いてくれるでしょう。

また、転職後は収入が下がるケースも少なくありません。銀行が住宅ローンで審査するのは「前年の年収」ですが、転職するとなると転職後の見込み年収も審査されるといわれています。そのため、転職後に収入が下がるなら転職前に住宅ローンを組んだほうが通りやすくなるでしょう。

転職前に住宅ローンを組む場合はデメリットもあります。デメリットは、主に以下の2つが考えられます。

  • 転職後に収入が下がるリスク
  • 返済中に転職した場合、金融機関への報告手続きが必要

いざ転職してみると、「働き方が合わない」「何らかの事情で提示された条件を下回る給与になった」というケースもあるものです。再度転職したり想定より給与が下がったりすれば、返済が苦しくなる可能性もあります。この点は大きなリスクとなりますので、転職時には入念に条件を確認しておきましょう。また、住宅ローン返済中に転職した場合は金融機関へ報告しなくてはいけません。手続き方法については後述しますが、この手間が発生するのもデメリットの1つです。

転職後に組むメリットとデメリット

転職後に住宅ローンを組む場合、メリットとしては以下の2つがあります。

  • 転職後に条件が良くなるなら、審査に通りやすくなる可能性がある
  • 転職後の条件で審査されるので、安心感がある

たとえばヘッドハンティングや中小企業から大手企業への転職など、転職前より条件が良くなる転職であれば住宅ローンで有利に働く可能性もあります。

「転職後に働き続けるかどうか」は評価できませんが、給与がアップするなら返済が滞るリスクも下がり、銀行側としては大きな安心につながります。

もし転職後に収入が下がる場合でも、審査に通れば銀行が「十分に返済できる」と判断したことになります。契約者としても、この判断は大きな安心につながりますね。

転職後に住宅ローンを組む場合、デメリットとしては以下があります。

  • 収支状況が分からない

転職前に条件を提示されていても、いざ転職すると何が起きるか分かりません。転職後の会社と条件面で揉めればまた転職を余儀なくされる可能性もありますし、給与が下がる可能性もあります。そうなると返済負担率が上がり返済が苦しくなるので、この点は大きなリスクでしょう。

転職後は住宅ローンの審査が通りにくい?影響はある?

よく「転職後は審査に落ちることがあるから、ローンを組むなら転職前がいい」という話も耳にします。確かに転職前のほうが通りやすい状況も多いですが、実はそうとは限りません。転職が住宅ローンに与える影響について、詳しく見ていきましょう。

転職後に住宅ローンの審査が通りにくい理由

まず、銀行の住宅ローンにおける審査項目をチェックしてみましょう。各銀行の審査項目は明らかにされていませんが、一般的に以下の項目は必ずチェックするといわれています。

【事前審査】
・勤務先
・勤続年数
・借入者の健康状態

【本審査】
・完済時の契約者の年齢
・年収
・返済負担率
・勤務先情報(職種・雇用形態・勤務先の企業情報)
・借入比率
・不動産の担保価値
・保有している資産や保有状況
・返済能力の変化

上記を見ると分かるように、勤務先情報は事前審査と本審査、その両方でチェックされます。会社員の場合は、収入源となる勤務先情報は審査項目の中でもかなり重視されていると予想できますね。

前述の通り、銀行は住宅ローンの審査において勤続年数もチェックしていて、その基準はおよそ1年~3年以上といわれています。

つまり転職して数カ月程度の時に審査を申し込むと、勤続年数の基準を満たさない可能性があるのです。「転職直後は住宅ローンに落ちやすい」といわれる最大の理由はここにあります。

もちろんスキルアップや待遇アップのための転職であれば銀行の印象も良いのですが、すでに転職回数が多かったり短期間での転職を繰り返していたりすると、「転職後の会社もすぐ辞めてしまうのではないか」とみなされてしまうのです。

そのため、すでに転職回数が多い人の場合は住宅ローンで不利になる可能性があります。転職と住宅ローンを申し込むタイミングが被らないようにする、といった対策が必要です。

転職後でも住宅ローンを組みやすくなる場合

前述の通り銀行は勤務年数をチェックするので、転職はデメリットになりやすいですが、「転職=審査に悪影響」とは限りません。

中には、転職後のほうがローン審査に通りやすい場合もあります。それは前述したように、転職によって待遇など条件がアップするケース。その場合は銀行も前向きに審査してくれるようです。

また、「転職」といっても同業種での転職は一貫性があり、待遇アップにつながるのではと判断してもらえる可能性が高まります。安定性を評価されやすいので、あまり審査に悪影響とはならず、転職後の勤務年数が短くてもあまり問題ではありません。

また、大手企業以外にも税理士や弁護士といった「士業」といわれる業種の転職であれば安定性が高く、審査に悪影響はないといわれています。しかし同じ士業でも独立の場合は収入が不安定になるため、審査では不利です。独立を考えている場合は要注意です。

また、銀行は「転職=悪」とすぐに結論付けるわけではなく、その転職が前向きなものかどうかもきちんと審査するといわれています。何を基準に判断されるかは不明確ですが、契約者ができることとしては「職歴書をしっかり書く」、です。

職歴書とは住宅ローン審査時に金融機関に提出する書類の1つで、中には転職理由を書く部分があります。

そこにスキルアップなどの前向きな転職であることや長く続ける意思があること、そして待遇がアップするならその旨も明記するなどして、銀行に「安定性」をアピールするのも1つの方法としておすすめです。

審査中に転職した場合は注意!

事前審査から本審査までは、難航すれば1カ月以上かかることもあります。その間に転職する場合は特に注意が必要です。

中には、「もうすでに審査が始まっているから、転職したことは黙っていればバレない」と思う人もいるかもしれません。しかし、転職したら銀行側にはすぐバレてしまうのです。

銀行側に転職が発覚する最大のポイントは、「健康保険証」です。銀行は常に最新の情報で審査を行うため、事前審査と本審査の両方で健康保険証の情報も取得します。その際健康保険証の「資格取得年月日」が一致していない場合、すぐに転職したと発覚してしまうのです。

審査中の転職ということは勤務年数が1カ月もありませんから、審査項目の基準を満たさない可能性もあります。契約者が申告しない状況で転職が発覚すると、銀行への印象が大変悪くなるのは容易に想像できるでしょう。

審査項目が変わるため再審査になりますし、下手をすれば、そのことが原因で審査に落ちるかもしれません。

転職が原因で審査に落ちるだけならマシですが、実は「違約金」というリスクまで発生します。本審査で転職が発覚して落ちてしまった場合、すでに売り主と売買契約が成立している可能性があります。

その段階で審査落ちしてしまうと契約が成立せず、最悪の場合違約金を支払わなくてはいけません。

つまり住宅ローン審査中に転職をする場合は必ず銀行に報告して、上記のようなリスクを避ける必要があるのです。住宅ローン審査中の転職は、くれぐれもご注意ください。

住宅ローンの返済中に転職する場合

転職前に住宅ローンを組み、返済中に転職するというのはよくあるケースです。もちろん返済中に転職すること自体は問題ではありません。ここでは、すでに住宅ローンの返済を始めているときに転職する場合のポイントについてみていきましょう。

金融機関への申告は必須。必要な手続きは?

住宅ローン控除を受けている場合は必要書類を金融機関に提出
住宅ローン控除を受けている場合は、必要書類を金融機関に提出する必要がある

実は住宅ローンの契約約款には、住所以外にも勤務先に変更があれば直ちに報告するよう記載されています。つまり転職して勤務先が変わったら、契約者は速やかに金融機関に報告する義務があるのです。

銀行側にとって最大の義務は「返済」であり、滞納することなくきちんと返済していればひとまず問題はありません。ただ、住宅ローン控除を受けている場合は、引き続き控除を受けるために以下の書類を金融機関に提出する必要があります。

  • 源泉徴収票
  • 控除申告書
  • 住宅ローン残高証明書
  • 控除証明書

年の途中で転職した場合は、転職後に転職先の企業で年末調整を行います。控除申告書は税務署から、住宅ローン残高証明書は金融機関から送付されます。控除証明書は転職前の会社に提出しているため、税務署で再発行をお願いして転職後の会社に提出する必要があります。

借り換えをするなら転職前

すでに住宅ローンを組んで返済している人の中には、「借り換え」を行うケースもあります。借り換えとはすでに契約しているローンとは別に新しく住宅ローンを申し込み、元々の住宅ローンを一括で返済することをいいます。

借り換えは主に「返済中のローンよりもいい条件で契約する」という目的で行われます。契約時よりも低い金利になっていれば利息が下がり、その分総返済額を安くできるのです。

住宅ローンの金利がどんどん下がっている時代ですから、契約時よりも金利が下がっているというケースは珍しくありません。そのため、借り換えを行う人が増えているのです。

そこで気になるのは、「転職前と転職後、借り換えをするならどっちが有利だろう」という点ですが、結論からいうと「転職前」に借り換えを行うほうがスムーズといわれています。

金融機関の窓口で借り換えの相談にいったところ、転職直後で勤務年数が1年に満たないことを申告すると「融資できません」といわれるケースもあるほどです。借り換えは新規の借り入れと同じですから、やはり勤務年数は大変重要な審査項目となっているのです。

「年収が上がっていれば問題ない」と思われがちですが、特に転職回数が多かったり転職後の勤務年数が短かったりすると、銀行は審査を通さない可能性があります。

転職と住宅ローンの借り換えをほぼ同時期に検討するなら、先に住宅ローンの借り換えをして、無事に借り換えが終わってから転職するように調整しましょう。

転職で収入が減った場合の対策方法

スキルアップの転職であっても、最初の数年間は転職前より収入が下がることも珍しくありません。転職後に給与が大幅に下がって住宅ローンの返済が難しい場合、「繰り上げ返済」もしくは「返済期限を延ばす」という方法があります。

この2つの対策について見ていきましょう。転職は、その後のマネープランを変える必要がありますし、場合によっては返済プランの見直しが必要なこともあります。

繰り上げ返済で毎月の負担を軽減

転職後に収入が下がり住宅ローンの返済が難しい場合、まず検討したいのは「繰り上げ返済」です。繰り上げ返済の最大のメリットは、返済期間を伸ばさずに月々の返済額を減らせるという点で、これから子供の教育費などまとまった資金が必要な家庭に特におすすめです。

繰り上げ返済の場合は、今ある貯蓄の中からできる限り返済に回すというケースが多いでしょう。しかし、当然ながら貯蓄している分のほとんどを繰り上げ返済に回すと、何かあったときに家計が破綻しかねません。

転職で収入が下がっていることを考慮して、なるべく無理がない範囲で繰り上げ返済に充てるようにしましょう。

返済期限を延ばす

手元に繰り上げ返済できる資金がない場合は、早急に金融機関に相談し返済期限を延ばしてもらうほかありません。しかし返済期限を延ばしてくれるかどうかは金融機関の判断次第ですし、すでに最長の「35年ローン」を組んでいる場合、延長は不可能と判断される可能性もあります。

返済期限を延ばすとその分利息が増えるため、総支払額が増えるというデメリットはあります。しかし、転職で収入が下がってしまった家計の中で、滞りなく返済できるという点は大きなメリットです。

もし返済がかなり難しい状況になれば、早めに金融機関に相談してください。すでに返済が滞った状態で金融機関に相談にいくと、銀行側が難色を示すケースも少なくありません。

公開日 2020年7月20日
更新日 2023年3月22日

#ローン

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