公務員の住宅ローン金利はなぜ優遇される?返済に必要な年収やローンの組み方を伝授

公務員の住宅ローン金利はなぜ優遇される?返済に必要な年収やローンの組み方を伝授

公務員が住宅ローンの申し込みをおこなうと、基準金利(店頭金利)よりさらに有利な「優遇金利」が適用されるといわれています。ところがこの話はあくまでも一般論であり、すべての公務員に優遇金利が適用されるわけではありません。

今回は、公務員の住宅ローン金利優遇の落とし穴や注意点、住宅ローンの借り入れ可能金額、安全に返済するためのポイントまで解説していますので、ぜひ参考にしてください。

「公務員」という職業の特徴は?

公務員は大きく分けて「国家公務員」と「地方公務員」があります。国家公務員が活躍する場所はおもに三つです。

1・内閣府、財務省、厚生労働省などの「行政府」
2・裁判所などの「司法府」
3・国会の各機関などの「立法府」

おなじ国家公務員でも国家総合職と国家一般職、国家専門職とでは昇進速度や国費留学の有無などに差があり、国家総合職は官僚やキャリアと呼ばれる幹部候補生で待遇は特別です。

国家専門職には外務専門職員や国税専門官、労働基準監督官、皇宮護衛官などがあり、勤務する職場が決まっているスペシャリストとなります。地方公務員は都道府県や市町村などで働くゼネラリストで、市役所の窓口担当者や消防、ゴミ処理、上下水道、公園、緑地整備など住民に身近な行政サービスを提供する身近な存在。

公務員は民間企業の社員(正社員や非正規雇用)とは違い、景気変動による給与の変動が少ないのが大きなメリットです。一度公務員として採用されれば民間企業の正社員と比較して同等、それ以上の福利厚生や手厚い待遇が保証されます。休日出勤や時間外労働に対する手当も付与され、収入が安定しているのが魅力です。

公務員の住宅ローン金利優遇、その理由とは?

公務員が金利優遇される3大ポイント

公務員が住宅ローンを組むと、店頭金利よりもさらに安い優遇金利が適用される可能性が高くなります。民間企業に勤めている方や自営業よりも、住宅ローン金利が優遇されるには理由があるはず。それは一体どのようなものなのでしょうか?それは公務員という仕事がもつ高額で安定した収入、手厚い福利厚生、職場の安定性などにあります。

その1:収入・ボーナスが安定している

給料・ボーナス共に安定して支給される
景気に関わらず、給料・ボーナス共に安定して支給されるのは公務員ならでは

公務員はその雇用主が国や地方自治体なので、景気の波を受けにくく収入が安定しています。公務員の給与は民間企業の給与水準を参考に決められていますが、民間企業でも正社員の給与レベルに合わせているため給与水準が高め。

もちろんボーナスも定期的に支給され、事業所の業績によってボーナスカットで大幅に減額されるリスクはまずありません。住宅ローンではボーナス払いを利用して返済するケースもあるため、収入が安定している公務員は有利なのです。

手堅い収入源のある公務員は安い金利(優遇金利)が受けられる可能性が高く、保証料が少なくなる、連帯保証人が不要になるなどメリットがあります。ただ「公務員だから住宅ローンの審査が甘い」わけではなく書類はしっかり確認されるため、たとえ公務員であっても状況によっては審査に落ちることがあるので注意しましょう。

その2:解雇の危険性が少ない

公務員の場合、国や地方自治体が雇用主になるため、職場や収入が安定しているのがメリットです。民間企業は景気の良しあしにかなり影響され、好景気であれば月給やボーナスが上昇する一方、不景気になるとボーナスカットや残業代カット、下手をすれば倒産や事業所の破綻など失業するリスクもあります。

公務員は好景気に給与が一気にアップする可能性はほとんどありませんが、そのかわり不景気でも大きな影響を受けず安定した収入が得られ、解雇の危険性がかなり少ないです。一度公務員として就職すれば、自分から辞めない限りは安定した収入が望めます。

その3:退職金制度がある

公務員は勤務年数に応じた退職金が支給されます。例えば60歳で定年をむかえた公務員の退職金は平均で約2100万円前後と言われており、定年でまとまったお金が入ってくるのが強み。住宅ローンの残高を退職金で一括返済できる可能性もあります。

金融機関側も「退職金引当型住宅ローン」と呼ばれる、退職金で住宅ローンの一部を繰り上げ返済する商品を販売しているところもあるほど。退職金が確実に支給されることは住宅ローン返済にも有利なのです。

5000万のマンションを買うための平均年収はいくら?返済方法は?

5000万のマンションを買うための平均年収はいくら?返済方法は?

この項目では、公務員が5000万円の分譲マンションを購入すると設定して、借り入れできる金額や必要な頭金の金額、住宅ローン審査で注意したい点などをまとめています。

2016年の新築マンションの平均価格は5087万円前後というデータがあるため、ここでは5000万円の分譲マンションを購入するという前提で説明しましょう。銀行に住宅ローンを申し込むと、一体どれくらいの金額を融資してくれるのでしょうか?

一般的には年収の8倍が基準となっているため、5000万円の住宅ローンを組むなら年収625万円が平均的です。住宅ローンを借り入れる際は、ほとんどの場合頭金を用意します。この頭金の額によって借り入れる金額も変わりますし、住宅ローンの審査の通りやすさも違ってきます。

年収500万円なら、4000万円借りられる

年収500万円の公務員の場合「収入の8倍まで」までを基準としており、このケースでは4000万円の融資が可能になる計算です。この「年収8倍」は一般的な相場であり、この基準におさまっていれば審査もスムーズに通る可能性がグッと高まります。

もちろん収入の5倍、6倍であればさらに審査は通りやすくなりますが、この相場基準を満たすためには頭金を1000万円用意しなければならない点に注意。ある程度の頭金がなければ分譲マンションの購入ができませんので、計画的な準備が必要です。

自分はいくら借りられる?金額に見合った物件とは?

一般的に言われていることが自分に当てはまるかどうかは、実際に住宅ローンを申し込みしてみないとわからないことがほとんどです。そもそも検討している物件が年収と見合っているか、住宅ローンを申し込む前に考え直す必要があることも。より理想的な住まいを選ぶために、家の探し方から賢い選択肢までプロに一度相談するのがおすすめです。

新築は予算もエリアも限られる……という方には「中古マンション+リノベーション」が最もおすすめです。聞き慣れない選択肢かもしれませんが、家を購入する上で知っておいて損はありません。

【要注意】公務員でも住宅ローン審査に落ちるケースはある

「安定した職場」「レベルの高い収入」「解雇される可能性が低い」など、社会的に信用されているのが公務員です。また公務員の転職率や離職率はかなり低く民間企業の10分の1以下というデータもあり、安定した職場環境から一定収入を長期間維持することも可能。住宅ローン審査でも民間企業の会社員より有利なのはいうまでもありません。

いいこと尽くしのように感じる公務員ですが、慢心は厳禁。たとえ公務員であっても100%住宅ローン審査に通るわけではないのです。頭金ゼロ、年収の5倍以上の借入額、無理な返済計画などバランスの悪い融資申し込みでは審査で落ちる可能性が非常に高くなります。ほかにも以下のような条件に当てはまると、住宅ローン審査に通らない可能性があるため注意が必要です。

個人信用情報に問題点があり、他に借り入れがある

事故記録が残っている間はローン審査に通らない可能性が高くなる
「事故記録」が残っている間はローン審査に通らない可能性が高くなる

公務員が住宅ローン審査にパスでない大きな理由に「ブラックリストに名前が掲載されている」ケースがあげられます。実際にはブラックリストと呼ばれる固有リストはありませんが、延滞、債務整理、自己破産など個人情報に事故記録が掲載されると面倒です。事故記録は金融業界全体で一定期間共有されるため、記録が残っている間はローン審査に通らない可能性が高くなってしまいます。事故の内容は「延滞、債務整理、自己破産」ですが、もっとも重い自己破産の場合、事故情報が7~10年消去されずずっと残る仕組み。消費者金融やカードローンでの借入をおこない、支払いが延滞してしまった場合も傷として記録に残ってしまいます。

この傷を「異動」と呼ぶこともありますが、事故情報が一定期間残ることは覚えておいてください。カードローンの場合は事故情報が5年間残るため、その間、住宅ローン審査にパスするのはむずかしいでしょう。

健康状態に不安がある

住宅ローンは長期間にわたって支払い続けるローンなので、借入をおこなう方の健康状態についても審査されます。住宅ローンは団体信用生命保険(団信)加入が義務付けられていますが、この団信はローン支払い中にローン契約者が死亡・高度障害になった場合にローン残金を肩代わりしてくれる心強い存在。

ただしフラット35では団信の加入が義務付けられていないため生命保険へ加入しておく方が安全なケースもありますが、このような例は少数派です。そのため住宅ローンに申し込む段階でローン契約者に病気があり治療中であれば団信に加入できず融資がおりない可能性があります。この場合の対策は2つ。

1・病気治療中の方でも加入しやすいワイド団信で住宅ローン融資を受ける
2・団信の加入が必要ないフラット35で融資を受け、加入しやすい民間の生命保険に加入する

治療中の病気や容体によっては、ワイド団信や民間の生命保険に加入できないこともあります。見切り発車ではなく、事前に「治療中の病気で団信やワイド団信に加入できるかどうか」など事前に調査しておきましょう。

勤続年数が浅い

給与所得者は転職歴をチェックされ、あまりにも転職回数が多いと審査に通りにくくなる点は要注意です。以前は就職して3年経過しなければ住宅ローンの審査基準に満たないと言われていましたが、現在は1年以上経過すれば審査に応じてもらえるようです。では勤務開始後1年未満の公務員は住宅ローン審査に通らないのでしょうか?じつは勤務1年未満でも以下のような場合は審査に通る場合があります。

1・民間企業から公務員への転職
2・市町村公務員から都道府県の公務員へ転職したケース

民間企業に長く勤務していた方が公務員へ転職し、収入アップが望める場合は勤続1年未満でも融資がおりたケースがあります。また市町村の公務員が都道府県の公務員へとステップアップし、収入や地位が高くなっても有利です。住宅ローン融資の判断基準は金融機関によってさまざまですが、ネット銀行よりも地方銀行の方が個々の事情を汲み融通をきかせてくれる傾向にあります。もし勤続年数が短いことが不安であれば、地方銀行や信用組合に審査を申し込めば不安が解消される可能性も。

公務員なのに返済がギリギリになる?

公務員なのに返済がギリギリになる?

家族の将来を見据えた住宅ローンを組むことが大切

いくら収入の安定した公務員であっても、将来を見越した生活設計を立てておかないと生活が破綻することも。住宅ローンと並んで費用がかかるのが子供の成長に応じた養育費や教育費です。小学校から大学まで公立の学校に通わせた場合は約1000万円、私立であれば約2500万円かかるといわれています。

高校や大学受験のために塾に通わると余分にお金がかかりますし、習い事や留学など義務教育と別に特別な教育を受けさせれば一気に負担増に。マイホームの費用とは別に教育費を捻出しなければならないため、無理なローン返済は厳禁です。

余裕を持った住宅ローンを組むなら物件価格を下げなければならないでしょう。立地や予算などの条件に見合った新築がないなら、中古物件から探すのも手です。築浅でなくても、リフォームやリノベーションをすることで新築同様に綺麗な状態で住める上に、自分好みの部屋にできます。より詳しく知ってみたいという方は、オンラインセミナーなどで情報を集めてみましょう。

苦しくならない、住宅ローン返済のポイント

年収倍率に合った借り入れを

住宅ローンを支払いながら生活費や子供の教育費を捻出するためには、適正な年収倍率で借入金額を考えなければなりません。一般的に「適正な借入額は年収の5倍」と言われており、年収500万円の公務員であれば2500万円が適正な借入額になります。

ところが2016年の新築マンション平均価格は5087万円前後であり、2500万円の借り入れでは足りないのが現状です。そのため金融機関では年収の7倍や8倍の金額を貸出可能額として融資しており、審査もその条件でパスしています。年収倍率に合った借入額にするのが理想的でありできるだけ頭金を貯めて借入額を少なくするのがベストですが、年収の5倍は絶対ではなく目安として考えましょう。

返済比率を考慮する

適正な返済比率は年収の20%
適正な返済比率は年収の20%

住宅ローンを借り入れる際に重要になるのが「返済比率」ですがこれは年収に対する年間返済額の割合をいい、適正な返済比率は年収の20%といわれています。つまり年収500万円の公務員であれば返済額を年収の20%以内に抑えれば(年間100万円)ゆとりをもった返済が可能になります。

このとき注意してもらいたいのが額面年収がいくらになるか、という問題です。年収は基本給や各種手当、ボーナスに税金、社会保険料がすべて含まれており、手取り給与は税金や社会保険料が差し引かれるため基本給の約8割の金額しか口座に入ってきません。手取り金額と照らし合わせて返済していけるかどうかチェックしましょう。

銀行の貸出可能な返済比率は30%とされていますが、その返済比率では生活にゆとりがなくなることもあります。さらに固定金利か変動金利か、元利均等返済か元金均等返済かなど、金利や返済方法の違いにより総返済額が変化するので気をつけてください。

完済年齢を65歳に設定する

人生100年といわれており、銀行ではローン完済年齢を80歳に設定しているところもあります。ところが年金の支給金額は年々減少し支給開始年齢も引き上げられる傾向にあり、しっかりとした人生設計を考えておかないと住宅ローンで老後破綻する可能性が高い状況です。ローン完済年齢を80歳に設定しているなら繰上返済で早めにローンを支払い終わることが大切ですし、ローン完済年齢を65歳に設定し老後破綻しないよう計画しておきましょう。

夫婦で収入を合算して住宅ローンを組む

夫婦で公務員として働いている世帯、共働き世帯の場合は夫婦ペアローンを組むことで借入額が増え、購入する物件のレベルを引き上げることができます。夫婦で別々の住宅ローンを組むため、印紙代や事務手数料などがダブルになり経費がかかってしまうのがデメリットですが、夫婦で住宅ローン減税を受けることができるなどメリットもあります。

ただし「夫婦でたくさんお金を借りられる」と考えてしまうと返済が始まって家計がギリギリになるリスクもあるため、手取り年収からゆとりのある生活ができるかどうか、貯蓄に回せる金額など細かいところをシュミレーションしておくと安全です。

出産・離婚という落とし穴

住宅ローンは20年、30年と長期間返済していくため、途中で妻の出産や夫婦の離婚などのトラブルが起きる可能性もあります。結婚後5年未満で離婚をする人は全体の約32%いるといわれており、決して他人事ではないのです。出産・育児により妻の収入が減少すれば住宅ローンの返済が困難になってしまいますし、離婚となればペアローンの場合お互い連帯保証人になっているため物件を売却し清算しなければなりません。

ところが売却してもローンが残ってしまう場合は離婚してもローン返済義務が残り揉めるケースが多く、最悪の場合自宅が差し押さえられ、不動産が競売にかける可能性も。夫婦共有財産としてのマイホームが自己破産の元になってしまうかもしれません。ペアローンで背伸びをしすぎると思わぬトラブルに遭う可能性もあるため、物件選びは慎重におこないましょう。

変動金利?固定金利?正しい選択を

公務員という職業は収入が景気変動に大きく左右されないため、長期間安定した給与が見込めます。ただし以下のような点には注意が必要です。

・副業ができない
・大きく収入が増える見込みがない

どれだけ家計が苦しくなっても副業が禁じられているため、副業によって収入を増やすことができません。また景気がよくなっても大きく収入が増えるわけではないため、増えた収入で住宅ローンの一括返済をおこなうこともむずかしいでしょう。

そこで全期間固定金利を使い、計画的に返済するのが有利です。固定金利は変動金利より金利が高くなりますが、公務員は適用金利が優遇されやすいので金利差が小さくなります。

公務員の特権、共済住宅ローンを活用しよう

共済住宅ローンとは?

公務員が住宅ローンを申し込む場合は、民間金融機関だけではなく共済住宅ローンを利用することもできます。共済住宅ローンは公務員の相互扶助や生活向上のためにもうけられた制度。共済住宅ローンのメリットや特徴は、以下のとおりです。

・借入時に連帯保証人や保証料、抵当権の設定が不要
・貸付金返済時に被災した場合、住宅災害再貸付により追加融資が可能

民間の金融機関では保証料や担保が必要ですが、共済住宅ローンでは必要ありません。融資時に厳しい審査もないため心理的負担が軽く、申込も職場でできてとても便利。ただし貸付限度額は勤務年数により変化するため、希望する金額を融資してもらえないことも。長期間勤務することが信用となり、融資額もアップします。そのためメインとなる住宅ローンの補助として共済ローンを利用する方もいますし、そのような使い方も可能です。

公開日 2020年7月10日
更新日 2023年3月22日

#ローン

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