【リフォーム産業新聞社に聞いてみた】没交渉だった姉弟の絆を復活させた“家開きリフォーム”とは?

【リフォーム産業新聞社に聞いてみた】没交渉だった姉弟の絆を復活させた“家開きリフォーム”とは?

リフォームやリノベーションは、住空間を心地よく便利な空間にするだけでなく、住む人のライフスタイルそのものを見直すきっかけになります。なかには、リフォーム、リノベーションによってその後の人生が大きく変わったり、生きがいが見つかったりする人も。そんな、「生き方リノベーション」をした人について詳しく知るためにお話を聞いたのはリフォーム産業新聞社『リフォマガ』編集長の川村史子さん。リフォーム業界歴14年のベテラン編集者です。自身も5歳のお子さんを育てるワーキングマザーとして、生活者目線で多くのリフォーム取材をしてきた川村さんに、印象に残ったエピソードを聞いてみました。

川村さんによると、50~60代以降になるとバリアフリーリフォームを検討する人が増えてくるそう。将来的に介護を想定し、段差をなくしたり手すりを付けたりといったリフォームは、一定の依頼があるのだとか。今回ご紹介するのは、戸建てのリフォームを依頼した70代男性の話。いわゆる一般的なバリアフリーリフォームとは違い、リフォームによって「家開き」を実現したケースです。

「家開き」とは、今回の依頼を受けたアキ設計の女性社長、池上裕子(いけのうえ・ゆうこ)さんが提唱しているリフォームのスタイル。アキ設計のHPにはこう書かれています。

「『家開き』とは、自分の家に人を受け入れ、他者との交流を図る暮らし方。個人を尊重した自宅で行う小さく密な交流を促すもので、基本的にパブリック化しないものです。好きな人と好きな時に好きなことでつながる自宅での暮らし方です」

高齢化社会、だれもが老人ホームに入れるとは限りません。人生100年時代、住み慣れた街で最後まで自立して暮らすために、自宅で公的な福祉サービスを受けながら家族と一緒に暮らせる家を、というコンセプトで池上さんは多くのリフォームを手掛けてきました。バリアフリーリフォームや介護リフォームという枠をこえた「家開き」リフォームとは? 詳しく紹介します。

1階と2階で分断されていた姉弟の生活

70代の男性(Aさん)、80代の女性(Bさん)という姉弟ふたりで住んでいた築30年の戸建て住宅。1階にAさん、2階にBさんが暮らしている状態でした。姉弟のコミュニケーションは必要最低限で、いい関係とはいえない状況だったそうです。

「リフォームを依頼したのはAさんです。ひとつの戸建ての1階と2階に住んではいましたが、生活は完全に別々。互いの暮らしには干渉せず、ほとんど会話もない状態でした。キッチンやお風呂などの水回り設備が2階にあったので、Aさんは主にお風呂にはいるときだけ2階に行くといった感じでした。お姉さんと顔を合わせるのを避けたくて、食事はコンビニ弁当などがメイン。お湯を沸かすなど、どうしても必要なときしかキッチンを使っていなかったようです。そんな生活が不便だと感じて、自分が暮らす1階部分のみのリフォームを依頼したという経緯です。お姉さんのBさんは初期の認知症を患ってはいましたが、まだなんとか自分で生活できていました。とはいえ実際はゴミだらけの部屋に引きこもり状態だったそうです」(川村さん)

リフォームを依頼した時点では、1階で自分の暮らしを完結させることが目的だったAさん。自分だけが楽しく暮らせればいいという考えではあったものの、Bさんを老人ホームなどの施設に入れるという考えはなかったのだとか。2階を放置したまま1階だけをリフォームするのは現実的に難しいこともあり、姉弟両方が快適に暮らせる5年後10年後を考えたリフォームを提案したのがアキ設計の池上社長です。

「Aさんは、お姉さんを施設に入所させるつもりはなかったものの、どうしていいか分からない状態だったんですね。池上社長に、お姉さんのことはどう考えているのかと聞かれるうちに、少しずつ考えを整理できたようです。こうして2階もリフォームをすることになりました」(川村さん)

「もしかしたらダマされている?」疑惑が信頼にかわるまで

「設計が専門で、本来ならリフォーム内容の提案だけをすればいいはずなんですが、アキ設計のスタッフのみなさんは物であふれる2階の片付けからはじめました。片付けのために家に通ってくる女性スタッフに対して、初期の認知症であったBさんは『あなた誰?』と毎度訪ね、Aさんも何でこんな事までしてくれるのか、半信半疑のようでしたが、少しずつ心を開いていったそうです」(川村さん)

外に出かけられないBさんが家のなかで楽しい気分で過ごせるように、2階はオレンジや黄色の壁紙で部屋の雰囲気を明るくリフォームされました。トイレは介護士も入れるように広く、コンセントの位置を使いやすくするなど、本人の過ごしやすさに配慮。さらに、もともと人と話すことが好きでファッションにもこだわりがあったというBさんのために、英会話とピアノのレッスンを週1回ずつ、出張美容師やヘルパーなども手配したそう。

「リフォームによって本人が過ごしやすい環境を作ったことはもちろんですが、いろいろな人が家に入って来る体制を整え、サポートしてもらいやすい設計であるのが特徴的ですね。いろんな人が週1回くることでそれぞれの負担も重くなりません。来訪者が自分でお茶などを出せるよう、食器棚の中身が分かるように扉を透明にして分かりやすく収納するなどの気配りが行き届いていました」(川村さん)

最後は食事まで共にするようになった姉弟

もともと交友関係が広く、家に人を招くことが好きだったAさんが住む1階部分も、将来的に外出が困難になった場合でも人が出入りしやすいように設計されました。オープンでわかりやすいキッチンのセルフサービススタイルで、招く側も招かれる側も負担が少なく、必要以上に気を使うこともありません。訪れた人がくつろぎやすい部屋には自然と人が集まり、それまで以上に友達が気軽に訪ねて来やすい空間になったのだとか。

リフォーム前は会話どころか顔を合わせることもほとんどなかった姉弟でしたが、BさんがAさんのために朝食を用意したり、Aさんの友達が来たときに同席したりと交流することが増えたのだとか。もともとおしゃれが好きだったBさんでしたが、以前にも増して身だしなみに気を遣うようになり、体調がいい日も多かったそうです。

「高齢で外出が難しくなってくると、どうしても引きこもりがちになってしまいますが、家に人を招き入れることで外とつながる暮らしが可能になります。この姉弟のケースは、お友達や習い事の先生に自宅に来てもらうことで趣味が広がったり、生きがいを見つけるきっかけになったいい例。設計者がプライベートな部分に介入することに最初は違和感があったというAさんですが、スタッフの献身ぶりに『本当に自分たちのことを考えてくれているのだ』と心を許し、全面的にサポートしてもらうようになりました」(川村さん)

依頼者のライフスタイルに寄り添い、本業の設計だけでなくトータルでサポートする池上社長の「家開き」リフォーム。家にいる時間をいかに楽しく過ごすか、withコロナ時代の今だからこそ、「家開き」というキーワードは心に響くのではないでしょうか。子育てや介護が大変という家庭には、ヘルパーやシッターを手配したり人の手を借りやすい環境をつくり、自宅でショップやサロンを開きたいという人には、最適な間取りづくりはもちろん、ショップオープンのためのチラシ作りやホームページ制作までサポート家だけでなく人生の設計までも手助けしするような徹底ぶり。リフォーム内容だけでなく、依頼者とリフォーム業者の関わり方も多様化していることが分かります。個性や強み、特徴があるリフォーム会社。自分のライフスタイルを理解してくれる業者との出会いが、リフォーム成功の近道といえそうです。

取材・文:古田綾子

川村史子

株式会社リフォーム産業新聞社が発行するリフォーム業界の現場担当者向けメディア『リフォームセールスマガジン』編集長。1984生まれ。東京都出身。大学卒業後、2006年にリフォーム産業新聞社に新卒入社。同社で発行する『リサイクル通信』・『リフォーム産業新聞』の記者・編集職を経て、2012年に創刊したリフォームセールスマガジンの編集業務に携わる。

公開日 2020年9月29日
更新日 2020年9月28日

#リノベーション, #リフォーム

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