【リフォーム産業新聞社に聞いてみた】「リフォーム」「リノベーション」っていつからはじまったんですか?

【リフォーム産業新聞社に聞いてみた】「リフォーム」「リノベーション」っていつからはじまったんですか?

「リフォーム」「リノベーション」という言葉は聞いたことがあっても、実際にどんなものなのか、どこの誰にお願いすればいいのか、わからないことばかり……。わからないことは先達に聞け!というわけでリフォーム業界の大先輩「リフォーム産業新聞社」さんに、リフォーム・リノベーションにまつわる様々な話を聞いてみました。

いまでこそ「リフォーム」「リノベーション」は、新しい住まいのスタイルのひとつとして浸透していますが、ほんの数年前まで状況は違いました。そもそもリノベーションという言葉自体、メジャーではなかったですし、リフォームというと「壊れたから仕方なく」「(業者が)何となく胡散臭い…」といったネガティブなイメージがつきまとっていました。ところがいまでは「自分らしく暮らすためのスタイル」「新築よりも中古+リノベーションのほうがお洒落」といった、ポジティブな印象を持つ人が多くなっています。どこで「リフォーム」「リノベーション」のイメージは変わったのでしょうか? リフォームの業界紙、雑誌を数多く手がける「リフォーム産業新聞社」の福田氏にお話を伺いながら、リフォーム、リノベーションの歴史をひも解いていきます。

日本人の「新築信仰」は根強い…

「リフォームの話の前に、まずは日本の住宅事情の話から。時代は終戦直後にまでさかのぼります。空襲で自宅を無くした人や海外から日本へ帰国した兵隊のために、毎日の生活を送るための家を用意しなければなりませんでした。当時、400万戸以上の住宅が必要だったと言われています」(福田氏)

終戦当時は圧倒的に住宅数が不足していましたが、資材も少なく、バラック的な住まいで雨露を凌いでいた人も多かったようです。昭和20年代、30年代は住宅ローンが組みづらかったこともあり、まだまだ住宅の着工数は少なかったそう。団地の供給も増えましたが、やはり「マイホーム」を夢見る人も多く、昭和40年代に入り、急激に一戸建ての着工数が増えていきました。

日本人には「新築信仰」が根強くあり、住宅ニーズが高かった高度成長期も新築住宅が人気。しかし、右肩上がりの経済成長も1973年のオイルショックで踊り場を迎えます。日本の景気は後退し、新築物件を購入したい声が徐々に減少。それに対して、建物の内装を作り替える「増改築」や「営繕」に興味を示す人が徐々に増えてきたのです。

「リフォーム」の知名度が上がったのは、トラブルが増えたから!?

増改築、営繕の需要の高まりとともにそれらを手掛ける業者が急増。トラブルも増えていった

オイルショック以降、増改築や営繕、今でいうところのリフォームに対する需要が増えていきます。需要に合わせてリフォームを手掛ける工務店や企業が新規参入してくるのですが、プレイヤーが増えればトラブルが増えるのは自然の流れ。そのトラブルを対応するように、1983年に「日本増改築産業協会」(現在の日本住宅リフォーム産業協会)という民間のリフォーム団体(ジェルコ)が誕生しました。

翌年1984年には財団法人の「日本住宅リフォームセンター」(現在の住宅リフォーム・紛争処理支援センター)が設立され、この時期から急速に「リフォーム」という言葉が一般的になっていきます。この1983年、84年あたりが「リフォーム元年」と言われており、世間的にリフォームの知名度がこのあたりから急激に上がっていきます。

景気がよくなるとリフォームよりも新築に目がいって…

「リフォーム」という名称も市民権を得て、リフォーム市場は順調に伸びるかと思われましたが、そうそううまくはいきません。

「オイルショックを乗り越え、再び日本の景気は右肩上がりに変化していきます。景気の盛り上がりから遅れること数年、80年代に入ると新築住宅の着工件数は再び増えていきます」(福田氏)

80年代、リフォームの数も増えてきていたようですが、世間の人々の注目は新築住宅に向いていたようです。さらにバブル期へ時代が移っていくと、人々の生活はさらに裕福なステージへとシフトしていきます。1985年あたりに政府が「リフォームを増やそう」とキャンペーンを行ったこともあり、ある程度のリフォームは増えたようですが、まだまだ積極的に「本格的なリフォームをやろう!」という風潮にはなっていなかったようです。

そして2000年代になるとリフォーム業界に試練が待ち受けます。いわゆる「悪徳リフォーム詐欺事件」です。

「悪徳リフォーム詐欺事件」のメディア報道でリフォームのイメージが…

いまだにリフォームと聞くと「悪徳リフォーム詐欺事件」を連想する人がいるかもしれません。2000年あたりから世の中のリフォームへの関心が高まる中、2005年から悪徳リフォーム詐欺問題が浮上しました。高齢者をターゲットに、勝手に床下や天井などへ装置を設置し、高額な工事費を請求する業者が現れたのです。

テレビを中心に多くのメディアが悪徳リフォーム業者を取り上げたことにより、”リフォーム=悪”というイメージが視聴者に広がってしまいました。結果として、2006年のリフォーム業界は有力事業者でも数割も売り上げを落とすほどの影響が出ました。

「当時はどこの企業も受注が全く取れなくなってしまって大変でした。その中でも売り上げを伸ばしていたのが、住友不動産の『新築そっくりさん』などの大手事業者です。理由としては、顧客のニーズが”大手だから信頼できる”、”価格がわかりやすい”、”安心できる”などのキーワードでした」(福田氏)

「訪問販売」スタイルの功罪

この悪徳リフォーム詐欺事件は、リフォーム業界にとって大きなダメージとなりましたが、悪い話ばかりではありません。ユーザーの自宅に直接訪問し、リフォームをすすめるその「訪問販売」スタイルは、リフォーム業界にとってプラスの面もあったと福田氏は語ります。

「元来リフォームというのはニーズが顕在化しにくいサービスです。積極的に『そろそろ屋根を修理しよう』『キッチンをリフォームしたら家事が楽になるかも』と思う人はまれ。故障などで本来の機能を果たせなくなってはじめて『リフォームしなくちゃ』となるケースがほとんどです。訪問スタイルは価格が市場と比較し、高額すぎるところが多いという問題点はありましたが、潜在的なニーズを引き出したという点で、リフォームの訪問販売は一定の成果をあげたといえます」(福田氏)

訪問販売は、「築15年だったらそろそろ修理したほうがいいですよ」「リフォームしたら生活が快適になりますよ」とユーザーに「気づき」を与えたという点において、リフォーム業界の進むべき方向性を示したといえます。「気づき」を与えて、ニーズを引き出すスタイルは、いまリフォームの新興勢力となっている家電量販店のリフォームサービスへとつながっていくのです。

「温水洗浄便座」が家電量販店の新たなビジネスを開拓した

「温水洗浄便座」の販売が家電量販店のビジネスにとって、大きなターニングポイントとなる

近年、大手の家電量販店がリフォーム業界へ参入してきています。その背景にあるのは、家電売り上げの伸び悩み。ネット通販にシェアを奪われるなか、売り上げを伸ばすには新しい事業を取り入れる必要がありました。

「家電量販店がリフォームを提案するきっかけに使った商材のひとつが『温水洗浄便座』です。便座を買いにきたお客さんに、便器自体の交換まで提案したらどうだろう?という発想からはじまりました。そして、売り場で販売員がリフォームの案内をしたら、驚くほど反響があったんです。実際に案内をしてわかったのが、トイレのリフォームは半日で終わる手軽な工事だったのですが、施工期間や価格について知らない人が多かったそうなんです」(福田氏)

リフォームは自発的に工事をやりたいという気持ちが起こりにくいサービスです。そこで、家電量販店へ来たユーザーに、商品を案内するだけでなく、リフォーム工事の紹介をする。その結果として、消費者の需要を引き出すことができたわけです。

「リフォームの知識を持っているユーザーはそもそも少ないのです。具体的なお話しをすると、旧式トイレの水の使用量は約13リットル程度ですが、最新のトイレは約6リットル程度の量で済みます。こんな話をセールスの現場ですれば、『やっておいて損なことはないな』と思ってもらえるのです」(福田氏)

最近は、食器洗浄機、レンジフード、内窓など、便利なだけでなく、節約や“家事楽”に活かせる家電が多数あります。そして意外と知られていないのが、施工期間がそれほど長くない点。こういった文脈で、家電量販店はリフォームの売り上げを伸ばしているのです。現在は、家電量販店のほかに、ホームセンターやスーパー、ガス会社などもリフォーム業界へ参入しはじめています。他業種の今後の業界内の動きに注目が集まります。

ユーザーニーズに合わせて形を変えてきた、リフォーム業界

リフォームは、ユーザーニーズの変化とともに、そのスタイルを変えてきています。価格の明朗化、訪問販売、家電量販店での販売……いろいろとターニングポイントはありましたが、もっとも大きな変化は、ユーザーに「気づき」を与えるスタイルにシフトしたこと。家に不具合が生じて、そこを修繕したいと考える「顕在層」だけでなく、ちょっとした工夫でさらに快適な生活を楽しみたいと考える「潜在層」がリフォーム、リノベーションの存在を知り、検討するようになると、より一層リフォーム、リノベーション業界は活性化するはず。そして、業界だけでなく、日本人の住まい環境自体がより豊かなものになるはずです。

福田善紀(ふくだ・よしのり)

株式会社リフォーム産業新聞社・取締役。1980年7月生まれ。北海道函館市出身。明治大学卒業後、飲食業界向け情報紙、賃貸業界向け専門新聞社を経験後、2007年に「リフォーム産業新聞社」入社。2012年編集部デスク、2013年編集長を経て、2015年 報道部長に就任。2016年からは企画開発部部長も兼務。2020年取締役に就任し、現在に至る。

リフォーム産業新聞

公開日 2020年8月17日
更新日 2020年10月22日

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