リノベーション物件の耐震性は高い?低い?中古マンションを賢く安全に選ぶ方法とは

リノベーション物件の耐震性は高い?低い?中古マンションを賢く安全に選ぶ方法とは

昨今では、デザイン性だけでなく、耐震性も合わせてリノベーションを検討する人が増えてきました。

国土交通省の調査データによると日本の全住宅のうち85%以上が耐震設備をしており、地中古物件を購入する際は『耐震』という視点から補強工事が必要なのか、耐震性の高い建物なのか適切に判断して購入を検討する必要があります。

当記事を通して、リノベーションと耐震の基礎知識を身につけ中古物件購入時に是非活用してください。

リノベーション物件の耐震性

耐震性とは、地震の時にどの程度まで耐えられるのかを表現する度合いのことをいいます。つまり、『耐震性が高い』住宅ほど大きい地震にさらされても、損傷したり倒壊したりしにくいです。

耐震性の目安として『新耐震基準』『旧耐震基準』というものがあって、どちらの基準を満たしているかによって耐震性の大きさが変わります。

1981年6月以前を対象とする『旧耐震基準』に比べて、それ以降の基準として設けられた『新耐震基準』の方が大きな地震(震度6強〜7)に耐えられるような基準として設定されています。

そのため、中古物件を探している方で『耐震性』を選択条件の一つとして考えている場合は、築年数を調べて1981年6月より後なのか前なのかを調べることで耐震性の大きさを確認することが必須であるといえます。

また、耐震性の低い物件を購入する場合はリノベーションを行う際に補強工事と併せて行うことで、建物の基礎部分や柱など全体の工事を行いやすくなるのでおすすめです。

耐震基準とは

耐震基準とは、建築物を設計する際に『建築物が最低限の耐震能力を持っている』ことを証明するための目安となる基準のことです。

現在までの耐震基準は1981年6月を境目に『旧耐震基準』と『新耐震基準』に分かれており、大きな地震が起きたりするたびに少しずつ改変されてきています。

⦁ 新耐震基準
1981年6月以降に建てられた物件が対象になっており、震度6強から7の地震でほとんど損傷しない建物であることを証明する目安として扱う基準。

⦁ 旧耐震基準
1981年6月以前に建てられた物件が対象になっており、震度5程度で倒壊しない建物であることを証明する目安として扱う基準。

ふたつの基準を比較してみると、旧耐震基準は『倒壊しないこと』を基準としており、新耐震基準は『損傷しないこと』を基準としています。

つまり近年の耐震基準では、「1回の大きな地震に耐えられる」ことよりも「複数回の大きな地震に耐えられる」ことで継続して安心できる建物の建築を目指していることがわかります。

耐震等級とは

耐震等級とは、地震が起こった時に『どの程度まで耐えられるか』を、『住宅品質確保法』に沿って等級1〜3の3段階で区分したものをいいます。

耐震性の認識とほぼ近いですが、耐震等級は『明確に等級けされたもの』と覚えておきましょう。また、物件の等級によって「地震保険料の割引を受けられると」といった特典も保険内容によっては存在します。

⦁ 耐震等級1
震度6強〜7相当の地震に対して、倒壊・崩壊しない基準

⦁ 耐震等級2
耐震等級1の1.25倍相当の地震に対して、倒壊・崩壊しない基準

⦁ 耐震等級3
耐震等級1の1.50倍相当の地震に対して倒壊・崩壊しない基準

リノベーションの耐震補強工事とは

物件購入の際に『新築物件』の購入検討者が多いのは以前と変わりませんが、最近では『中古物件』の購入を検討する人の割合が年々少しずつ増えてきている傾向があります。

耐震に対する基準を大きな地震が起きるたびに少しずつ改善されることで、中古物件購入時に耐震についての検討を購入者に提案する不動産屋も増えてきています。

主にリノベーションを行う際に並行して耐震補強工事の検討を提案されるのですが、「実際のところ耐震補強工事って建物が古かったら意味ないのでは?」と疑問に思う方も少なくないはずです。

結論から言うと、建物が古くても、耐震補強工事をすればしっかりと耐震性を担保することができます。例えば、一般的な中古物件は主に『基礎と柱』によって支えられているのですが、補強工事によって柱と外壁を一体化させれば『基礎・柱・外壁』と3つの部分で建物を支えることで耐震性を増加させることができます。

柱や外壁だけでなく、他にも耐震補強における工事のポイントは複数あるので、各中古物件における地震に対するウィークポイントを見定めることで現在の基準に適した工事をしてくれます。

中古マンションの耐震補強

中古マンションにおける耐震補強の方法は主に3つあります。

作業内容の種類費用
壁の耐震補強『後打ち壁増設工事』
→既存の壁に新しい鉄筋コンクリートの壁を増設し、補強することで、建物の耐久性を高める
・鉄筋コンクリート壁の増設1箇所あたり約100万円
柱の耐震補強『柱補強施工』
→炭素繊維シートや鋼板を既存の柱に巻きつけることで、柱そのものを強化する
『耐震スリット施工』
→柱と壁の隙間を開けることで柱の動きに遊びを設けることで、地震の力を逃す効果が持てる
・炭素繊維シート1箇所あたり約80万円
・鋼板1箇所あたり約100万円
外付けフレームの耐震補強『外付け鉄骨補強』
→建物の外側に鉄骨ブレースを増設することで建物の外側から建物を補強する
・鉄骨ブレース増設1箇所あたり約200〜300万円

基本的に耐震工事にかかる費用は東京の場合だと約50%が500万円以下で済んでいます。

もちろん建物の老朽化度合いや損傷度合いによって価格は変化しますが、大まかな目安として押さえておくと役立つでしょう。

中古一戸建ての耐震補強

戸建の補強工事はマンションと違って「ここの壁だけ耐震補強してください」といった部分的な見積もりはとっていません。

そのため、以下では部分ごとの工事に対する費用の比較ではなく、『よくある工事パターンと費用』をメインに表としてまとめました。

費用作業内容の種類
20〜25万円筋交いや接続用の金具を壁1間に取り付ける工事が可能。
→柱と柱の間に筋交いをつけることで、床面を補強できる
30〜40万円耐震金具を、土台や筋交い・柱に取り付ける補強工事が可能。
→耐震強度が不足してる点に耐震金具をつけることで弱い部分前提を補強できる
*大体10個の金具を使用することで3〜40万円が目安とされる
50万円外壁に鉄筋ブレースやフレームのような補強材をかけて壁の耐震力を高める工事が可能。
→築年数が経った木造住宅で実施されるケースが多く、『内装材を取り除く必要がない』『工期がそこまでかからない』といったメリットが存在。
65万円家の外壁材を剥がして、柱や土台に耐震パネルを設置するといった工事が可能。
→柱と土台の結合が強化されるため揺れに強い家になる。
80〜120万円屋根材を瓦から金属ルーフにすることで軽量化ができる工事が可能。
→屋根が軽量化されることで住宅全体にかかる負担が軽減される上に、屋根の重みが消えて自身の揺れを小さく効果がある。
*屋根の工事のため広さ次第で100万円以上かかってしまうことがある

一戸建てに関してはマンションと違って耐震補強をできる箇所が多いです。そのため、事前に耐震診断を必ず行い「一番弱い部分はどこか?」を調査してもらい重要なポイントから補強をしていくのを心がけましょう。

当たり前のことですが、耐震工事の目的は『要塞を作ること』ではありません。『地震で損傷・倒壊しない家に改善すること』を忘れず、耐震工事に余計な費用をかけないようにしましょう。

耐震補強工事で申請できる助成金

耐震補強工事で申請できる助成金
耐震補強工事は物件にとって重要。自治体の助成金を活用できる場合がある

耐震補強工事では助成金の申請をすることが可能です。一回の工事に何百万とかかる可能性が高い工事だからこそ、活用できる制度は全て使って出費を最低限に抑えることが大切になります。

助成金制度は『自治体が行なっているもの』はありますが、国が行なっている制度は現状存在しないので、自治体の該当地区にお住まいでない方の場合は、『所得税の特別控除』を申請して出費の軽減をしましょう。

【自治体が行なっている助成金制度】2020年度更新版

東京都中央区

補助金費用・工事費用の1/2(最大300万円)
・高齢者または心身に障害のある方がいる世帯は工事費用の全額(最大300万円)
対象者所有者・賃貸人
補助を受けるための条件⦁ 昭和56年5月31日以前に着工したもの
⦁ 木造住宅の助成については、区内の業者などに発注する工事などが対象
申請URLhttp://www.city.chuo.lg.jp/kurasi/sumai/taisintaisaku.html

神奈川県大和市

補助金費用耐震補強工事費の1/5と工事管理費用などの1/2の合計(最大50万円まで)
対象となる工事⦁ 基礎・柱・梁・耐力壁の補強、屋根の葺き替えによる軽量化などの耐震改修工事
⦁ 改修後の耐震診断による評価点が1.0以上で「倒壊しない、または一応倒壊しない」となる補強工事
⦁ 診断者が行う現場施工確認のための立ち会える工事
⦁ 耐震改修の工事後に耐震診断報告する
⦁ 市の耐震改修工事に係わる、事業者登録をした工務店などが実施した工事
補助を受けるための条件⦁ 市内にある木造住宅である
⦁ 申請者(所有者)に市税などの滞納がない
⦁ 昭和56年5月31日以前に建てられた、一戸住宅、長屋、共同住宅など
⦁ 耐震診断で総合評点が1.0未満の地階を除く、在来の軸組工法(骨組が柱と梁でできている)の一戸建てで、2階以下の建物
⦁ 建築基準法における建ぺい率、容積率の規定に適合している
申請URLhttp://www.city.yamato.lg.jp/web/k-shido/taisinkaishuhojyo.html

大阪府

補助金費用定額40万円(所得の低い方は60万円)
対象となる工事⦁ 耐震診断結果の総合評点が1.0未満、改修後は総合評点が1.0以上(1.0に満たない工事でも対象になる場合があります。)
⦁ 課税所得金額が507万円未満(目安の年収910万円)であること
補助を受けるための条件⦁ 昭和56年5月31日以前に建築されている
⦁ 今住んでいる建築物、もしくはこれから住もうとしている建築物
⦁ 市町村が定める要件に合致すること
申請URLhttp://www.pref.osaka.lg.jp/kenshi_kikaku/kikaku_bousai/taisin_hozyo.html

千葉県千葉市

補助金費用工事費の4/5(上限100万円)
補助を受けるための条件⦁ 昭和56年5月以前に建てられた住宅である
⦁ 耐震判断の結果が1.0未満である
⦁ 申請者自らがその住宅を所有し、居住していること
⦁ 市税の滞納がないこと
⦁ 在来の軸組工法による一戸建ての住宅で、2階以下であること
申請URLhttps://www.city.chiba.jp/toshi/kenchiku/shido/03_kaisyu.html

福岡県福岡市

補助金費用1戸につき上限90万円 耐震改修工事の46%に相当する額、または建物の延べ面積×3万3500円の合計額のどちらか低いほう(住宅面積が175㎡を超える場合は175㎡に相当する額で計算)
補助を受けるための条件⦁ 昭和56年5月以前に建築された木造戸建て住宅である
⦁ 2階建て以下である
⦁ 建物全体の構造評点が1.0以上となる耐震改修工事、または1階部分を1.0以上とする耐震改修工事
申請URLhttps://www.city.fukuoka.lg.jp/jutaku-toshi/bid_safe/life/006.html

申請の際には自治体により必要書類や手順が違うので、該当地区のホームページを確認して必要書類を確認するようにしましょう。

また、申請期間についても通年募集しているものでよければいいのですが、申請期間が定められている場合もありますので事前に確認しておく必要があります。

築年数以外でチェックすべき項目

基本的に耐震性は築年数で調査すれば問題ないのですが、物件によっては築年数以外にもいくつかのポイントをチェックすることで思わぬ耐震性の低さが露呈することがあります。

特に中古マンションにおいては戸建よりも露呈しやすいので、以下2つのポイントをチェックすることをおすすめします。

【築年数以外にチェックすべきポイント】
⦁ 耐震補強の履歴
⦁ 長期修繕計画

基本的に物件は戸建・マンション問わず『メンテナンス』が必要になります。雨漏りがしたり外壁にヒビが入ったり、と内容は様々でただ利用するだけでは老朽化していく一方です。

また、メンテナンスを行わないで利用を続けると耐震性も著しく低下しやすくなり、本当に補強が必要になった時には莫大な費用がかかってしまいます。

自身が物件を購入した後に大幅な補強が必要な事態にならないように、念の為調査しておくことで無駄な出費を避けることができます。

耐震補強の履歴

耐震補強が過去に行われているかを調べるには、不動産の売主(マンションであれば組合も含む)に聞くのが一番早いです。

もし書面で確認したい場合は『耐震補強の工事履歴書』『耐震診断の報告書』などを資料として確認させてもらえるか尋ねれば見せてもらえるかもしれません。

基本的に売主に対して耐震について尋ねるのは珍しいことではないので、管理会社に直接訪ねれば大体のことは応えてくれます。

耐震補強があったかどうかの有無を確認するのは人によっては「めんどくさい」といったこともあるかもしれません。しかし、購入前の耐震調査をサボってしまうと、後から「壁面にヒビが入ってしまった」のように物件の強度そのものに影響するような劣化が露呈してくる可能性が高くなります。

そのため、物件購入という大きな買い物をした後に、さらに耐震工事で大きな出費が出ないように事前に取れる対策は必ずしておきましょう。

長期修繕計画

長期修繕計画とは、10年・20年と長期にわたって不動産を維持することを目的として、定期的な修繕・メンテナンスを行う計画のことを言います。

優良マンションと呼ばれる物件は、20年以上の長期修繕計画の作成や、一定額以上の修繕積立金の徴収を行っているところが多いです。

そのため、こちらから売主に対して『長期修繕計画書』について伺うことで、その物件の耐震性や補修工事についての詳細を確認することができます。

事前に長期修繕計画について調査をしなくても、補修工事の度合いや築年数に応じてマンションの耐震性を図ることは可能です。

しかし、長期修繕計画書を事前に調べた方がその物件の『将来の補修に向けての概算費用予測』や『補修工事の実施予定時期』を大まかに知ることができます。さらに、物件自体のウィークポイントや老朽化懸念箇所をあらかじめ知ることができるので購入後の補修工事予想がたてやすくなります。

フルリノベーションがおすすめの中古物件

フルリノベーションとは、通常のリノベーション以上に大掛かりに住戸内を解体・撤去して自由自在に間取りやデザインを変更することをいいます。

【フルリノベーションをおすすめする物件】
⦁ 『全部屋をリノベーションしても建て替えるより安く済むパターン』の物件
⦁ 『リノベーションでデザインを変更するだけでなく物件全体の耐震補強も併せて行いたいパターン』の物件

フルリノベーションを検討する理由として、「建て替えるよりもお得」であることが1番の検討理由になってきます。どれだけ出費を抑えた形で自身の理想の物件に近づけるかを検討した上で、フルリノベーションを行うかを検討するようにしましょう。

特に耐震補強に関しては家具などが揃う前の購入直後が一番フルリノベーションと並行して行いやすいです。なので、そこでフルリノベーションをしない決断を下した場合は耐震補強を加えるタイミングを見失いやすいので、少しでも耐震補強を検討している方は迷わず取り入れることをおすすめします。

ここまで耐震補強が必要になる前提で解説しましたが、実際のところ不動産屋でない限り『本当にフルリノベーションが必要なのか?』を適切に判断するのは難しいです。

まとめ

中古物件の購入を検討する中で、耐震について調査することは非常に重要なことです。

いつ起きるかわからない大きな地震に対して安心感を持って暮らすことと、心配要素を抱えて過ごすことでは購入後の住まいに対する満足感は大きく変化します。

不動産の購入は不動産屋でない限り、一生のうちに何度もする買い物ではありません。

だからこそ、慎重に既存の物件の耐震情報などを見極めて、『リノベーション』をするのか『フルリノベーション』をするのかといった最善の決断をくだせるようにしておくことが大切です。

公開日 2021年5月27日
更新日 2023年3月22日

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